■優しさとお茶目さをもつ理想の父!『となりのトトロ』草壁タツオ

 1988年に公開された『となりのトトロ』は自然豊かな田舎を舞台に、幼い姉妹を中心に巻き起こる不思議な出来事を描いた話だ。登場するトトロやまっくろくろすけ、ネコバスなど、魅力的なキャラクターたちのインパクトも大きく、時が経った今も多くの人の心に感動を与え続ける人気作品である。

 メインキャラクターである草壁家は、父・タツオに、天真爛漫な姉妹・サツキとメイ、そして、病弱な母・靖子の4人家族だ。

 靖子の体を労って田舎に引っ越してきた一家だが、靖子は入院しており3人暮らしをしている。仕事で忙しい大学講師のタツオに代わってサツキが家事全般をおこない、幼いメイの面倒も見ている姿がなんともいじらしい。しっかり者のサツキ、やんちゃなメイだが、母親のいない生活に寂しさを抱く様子も作中からはうかがえる。

 だが、娘たちが明るくいられるのは、タツオの存在あってこそだろう。彼は大学に勤める博識な人間だが、少年のような心も持っている。“お化け屋敷に住みたかった”と新居を見てはしゃいだり、お風呂で子どもたちと全力で遊んだり。“トトロを見た”と言うメイのことも理性的に否定するのではなく、“いるかもしれない”と、寄り添う姿勢を見せている。

 タツオの子どもとのかかわり方には学ぶことも多い。遊ぶ時は全力で遊んでいたかと思えば、靖子の退院が延びてしまったことで取り乱すサツキを父親として冷静に諭す場面もある。

 さらにタツオは、靖子へのフォローも忘れない。物語のクライマックスでは、退院が延びて子どもたちに心配をかけてしまったと気にする靖子に「君もみんなも、これまでよく頑張ってきたんだもの。楽しみがちょっと延びるだけだよ」と、優しく返している。

 幼い子どもたちと、子どもを残して入院生活を送る靖子の双方に気を配っているタツオ。こうして考えて見ると頼りある父親であり、この上ないパートナーではないだろうか。

 

 ジブリ作品に登場するさまざまな父親たち。『崖の上のポニョ』のフジモトのように少々ぶっ飛んでいるが可愛らしい父親や、『借りぐらしのアリエッティ』のポッドのように寡黙で背中で語る父親など、個性はいろいろだ。

 全体的に女性キャラの印象が強いジブリ作品を、縁の下で支える立役者とも言えるだろう。ぜひ、この機会に彼らに注目しながら作品を見返してみてはいかがだろうか?

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