■悲劇すぎる!? おそろいのペンダントからの急転直下

 このようにマヤの言動にさんざん振り回されてきている桜小路くんだが、もっとも悲惨な展開と言えるのが舞台『紅天女』を巡る関係だ。

 当時のマヤは真澄の婚約を知り、ショックで演技に身が入らなくなっていた。そんなマヤを励ますべく桜小路くんは遊園地へ誘い、観覧車の中で「なにがあったかしらないけど もう忘れろよ」と言って、マヤを優しく抱きしめる。

 そしてお揃いのイルカのペンダントを買い、舞台上ではお互いが“魂のかたわれ”だと思うよう約束をする。さらにレストランでデートを楽しみ、アクシデントで海に落ちてしまったマヤを泳いで助け、お姫様抱っこをしてさらに絆を深めていく。普通、もうここまでくれば誰もが認める正真正銘のカップルだろう。

 しかしマヤはその後、真澄とクルーズ船で一夜を明かし、そこにバイクで迎えに来た桜小路くんを“一人で帰る”と言って拒み、真澄のもとへ向かって抱き合うのだ。

 その2人の様子を見た桜小路くんはショックを受け、バイクを運転中にトラックと衝突。全治2カ月の大けがを負って舞台に立てなくなる。まさに天国から地獄への急展開だ。

 ここまで献身的にマヤを支えてきたのに、真澄とマヤのラブシーンを目撃したことで何もかも壊れてしまった桜小路くん。その後はようやくマヤに対しそっけない態度を取るようになるのだが、きっと桜小路くんのことだからこの先もなんだかんだ言ってマヤを支えてしまうのだろうなあ……と思ってしまうのだ。

 

 このようにおよそ半世紀もマヤのことを一途に愛しつつ、なかなか報われない桜小路優。さらにバイク事故により骨折をしたまま、13年間完治していないままだ。

 しかしバイクの事故後、彼は松葉杖をつきながらも『紅天女』の一真役と向き合い、俳優としての道を切り開いていく。マヤの気持ちを手に入れることは難しいかもしれないが、せめて俳優としての成功は手にしてほしい。

 イケメンかつ優しくて性格も良い桜小路くんのことを、多くの読者は応援しているのだ。

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