■吉高由里子に田辺誠一…矢口監督が驚いた俳優たち

矢口史靖 撮影/有坂政晴

 ――ところで、『ドールハウス』での長澤まさみさんをはじめ、これまで多くの人気俳優と組まれてきましたが、監督が刺激を受けた俳優さんはいますか? 

矢口 僕は絵コンテを描いて撮影に臨むんですが、最初の頃は、俳優さんっていうのは絵コンテ通りに動いてくれないので、面倒くさかったんです。 

――そうなんですね(笑)。 

矢口 自分が考えたアイデア以外に他人のアイデアが混ざってくるのが、なにか純度が落ちる気がして。だけど、大学の先輩でもある映画監督の鈴木卓爾さんと短編映画(『ワンピース』シリーズ)を撮っていたとき、鈴木さんがその場の思いつきで自然な芝居をすると劇的に面白くなるのを何度も経験して、そこから現場で生まれるものが楽しくなっていきました。 

――特に監督が驚かれた俳優はいましたか。 

矢口 驚いた人でいうと、ミッキー・カーチスさん、吉高由里子さん(ともに『ロボジー』)。あとは、田辺誠一さん(『ハッピーフライト』)もビックリしましたね。 

 田辺さんはパイロットの役で出てもらったんですけど、無線でOCCから指示を受けるシーンがあって、「今、そんな指示されたって、空港に着く頃にはまた風が戻っちゃうだろ、分かってねえな」ってセリフを言うんですけど、何回かやってうまくいかなかったんです。それで「田辺さん、西田敏行さんがお風呂洗剤のCMのときに言っていた感じでやってもらっていいですか?」と言ったら、バシッとハマるお芝居をしてくれたんです。 

――西田さんのCMですか(笑)。 

矢口 なんかね、「お父さん、お風呂洗ってよ」とか言われた西田さんが、「今、やろうと思ってたのに言うんだものなぁ~!」とか言うんです。その感じを田辺さんがちゃんと分かってくれて。俳優さんとのやりとりは、そういう現場のやりとりでうまくいくこともありますね。 

矢口史靖 撮影/有坂政晴

【プロフィール】
矢口史靖(やぐち・しのぶ) 

1967年5月30日生まれ、神奈川県出身。東京造形大学時代に映画制作を開始。90年に8ミリ作品の『雨女』でぴあフィルムフェスティバルPFFアワードのグランプリを受賞した。93年に『裸足のピクニック』で劇場映画監督デビュー。『ウォーターボーイズ』で日本アカデミー賞優秀監督賞と脚本賞を受賞。『スウィングガールズ』では同賞の最優秀脚本賞を受賞した。ほか監督作に『ハッピーフライト』『WOOD JOB!~神去なあなあ日常~』『サバイバルファミリー』などがある。劇場長編11作目となる『ドールハウス』で初めてオリジナル・ミステリーを手掛けた。 

■作品情報
『ドールハウス』
原案・脚本・監督:矢口史靖
監督:渡辺一貴
出演:長澤まさみ、瀬戸康史田中哲司安田顕、風吹ジュン
音楽:小島裕規“Yaffle”
主題歌:ずっと真夜中でいいのに。
音楽:菊地成孔
配給:東宝

 

映画コミカライズ ドールハウス
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