『ドールハウス』矢口史靖監督イチオシは山岸涼子&稲川淳二…めっちゃ怖い「人形系ホラー作品」とはの画像
矢口史靖 撮影/有坂政晴

 『ウォーターボーイズ』『スウィングガールズ』で知られる矢口史靖監督が、『WOOD JOB!(ウッジョブ)~神去なあなあ日常~』以来となる長澤まさみさんとの再タッグで送る映画『ドールハウス』がついに公開。ポップなイメージの強い矢口監督作だが、本作ではゾクゾクしたミステリーが展開される。そこには大きな影響を与えた「人形漫画」や「怪談」の存在があった――。矢口監督に、クリエイティブのルーツを聞いた! 

【第1回/全2回】

――今回の『ドールハウス』には少女人形が登場しますが、監督はもともと山岸凉子さんの『わたしの人形は良い人形』という漫画が大好きだったとか。 

矢口史靖(以下、矢口) 山岸さんの漫画は、東京造形大学の先輩で、短編映画(『ワンピース』シリーズ)をずっと一緒に作っている鈴木卓爾さんが学生時代に貸してくれたんです。特に、『わたしの人形は良い人形』と『ゆうれい談』は、ぜひ読んでみてください。『ゆうれい談』を読むと、Jホラー映画のもとネタかな? と思う部分がいろいろと発見できるかもしれませんよ。 

――以前のインタビューなどでは、監督はあまり漫画には触れてきていなかったともお話されていました。 

矢口 週刊漫画誌はあまり読んだりしてきていないんです。でも、人から「面白いよ」と勧められた作品は読みます。 

――『ドールハウス』には、山岸さんの影響は入っているのでしょうか。 

矢口 山岸さんもそうなんですけど、本作の場合は稲川淳二さんの怪談も入ってます。「生き人形」という40分を超える長尺の話があって、僕は大学生のときに初めて聞きました。稲川さんが実体験した、等身大の女の子の人形の話で、とても怖いんですよ。それと、山岸さんの『わたしの人形は良い人形』を大学時代に体に染み込むように吸収していって、「怖いな、人形。可愛いな」とずっと思っていました。

■ジブリ、高畑勲に影響を受けた

――山岸さんの漫画の影響を受けたとのことですが、たとえばアニメーションで、矢口監督のクリエイティブなルーツのどこかに影響を受けたと感じる作品やクリエイターはいますか? 

矢口 あえて選ぶなら、ジブリ作品でしょうか。僕はどちらかというと高畑アニメ、宮崎駿さんよりも高畑勲さんかなと思います。日常の中でのちょっとした積み重ねで、お客さんの感情をブルブル震わせることができるのがすごいと感じます。大事件じゃないんですよね。ちっちゃなことでブルル! となる。

――たしかにそうした部分は、監督の作品に通じるところがありますね。 

矢口 そこにたどり着けたら最高ですね。 

――高畑監督では、たとえばどんな作品がお好きなんでしょう。 

矢口 まず『赤毛のアン』。暮らしの中の小さな積み重ねのリアリティが、後々ズーンと効いてくる。あとは『未来少年コナン』。あ、これは宮崎作品でした。わりと幼少期にテレビで見ていた作品が浮かびますね。 

――アニメーションにはどんな印象をお持ちでしょうか。監督としてアニメ作品を手掛けることに興味はありますか? 

矢口 実写と違って全てがコントロールできる良さ、イコール全て作らなきゃいけないという大変さがあると思います。僕は「アニメをやってみろ」と言われても、恐ろしくてすぐには手を出せる気がしませんね。アニメには偶然に生まれるということがないんですよ。絶対に描かなくちゃいけませんから。でも実写は偶然生まれることがたくさんあります。だから大変だし面白いんですけどね。 

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