■漫画世界とリンクする実在のお菓子

 このように、物語の舞台とリンクした銘菓が漫画に登場するケースは、その土地の魅力をより強く印象づける。明治末期の北海道を舞台にした、野田サトル氏の『ゴールデンカムイ』では、北海道恵庭市の老舗菓子店「株式会社ほんま」の「月寒あんぱん」が、鯉登少尉に関するエピソードで作中3回も印象的に登場する。

 その起源は古く、東京の木村屋のあんぱんを参考に作ったのがはじまりで、明治7年ごろには原型となるものが作られていたとか。「あんぱん」といっても平べったく、どちらかといえばぎゅっとしたまんじゅうや月餅に近い。

 これまで数度にわたって『ゴールデンカムイ』ともコラボもしており、2021年には主要6キャラクターが描かれたパッケージ、2024年には鯉登のみがパッケージに描かれたコラボ月寒あんぱんが発売された。

 最後はSNSから話題になり、老若男女に人気の『ちいかわ なんか小さくてかわいいやつ』。作者のナガノ氏は、Xで食事レポートをあげることも多く、『MOGUMOGU食べ歩きくま』という出かけた先で食べたものを紹介する漫画も発売。食べ物に縁が深い作風からか、『ちいかわ』にも実在のお菓子がたびたび登場する。

 中でも忘れられないのが、ある日ちいかわと出会って仲良くなったカブトムシが、ちいかわたちをもてなす時にあたたかいお茶と一緒に出した「猪最中」と「ホール・イン」。どちらも静岡の銘菓で、それぞれ「小戸橋製菓」「梅家」が発売している。

 ハチワレも「あんこがねっちりしてておいしー…」と太鼓判。そのおもてなし力の高さから、カブトムシは敵ではなく「有効型」だと思われたが……まさかのオチまで印象深い回だった。

 今回、紹介したお菓子はどれもが実際に手に入れることができるばかり。作中のキャラたちの気持ちになって食べてみると、なんだかちょっと嬉しくなりそうだ。

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