さくらももこさんの真骨頂! 漫画『ちびまる子ちゃん』忘れられない「後味悪い回」“永沢君をはげます会”に“熱帯魚全滅”のリアルの画像
DVD『ちびまる子ちゃん全集』1990年(ポニーキャニオン) (C)さくらプロダクション/日本アニメーション

 1986年から少女漫画雑誌『りぼん』(集英社)で連載が始まった、さくらももこさんの『ちびまる子ちゃん』。1990年から始まったアニメは現在でも放送されており、国民的人気を誇る名作だ。

 そんな『ちびまる子ちゃん』は少女向けのギャグ漫画でありながら、大人が読んでも笑えるようなストーリーが多い。その笑いはほのぼのとしたものだけでなく、なかには人の不幸をテーマにしたものや、生き物にまつわる残酷さを現したような、ちょっとブラックユーモアな回も多かった。

 そこで今回は『ちびまる子ちゃん』に登場する、なんとも「後味の悪いストーリー」を振り返ってみたい。

 

※本記事には各作品の内容を含みます

 

■人の不幸をクラス中のネタに…!?「永沢君の家 火事になる」の巻

 まずは、主人公・まる子のクラスメイトで、玉ねぎ頭で有名なキャラクター・永沢君にまつわるエピソードを紹介したい。

 コミックス10巻「永沢君の家 火事になる」の巻は、永沢君の家が火事になり、すべてを失う悲劇から始まる。火事の様子を祖父・友蔵と一緒に見に行ったまる子。友蔵に励ましてくるよう促され、まる子は永沢君に声を掛けようとするが、気の毒すぎて何も言えない。

 その翌日、学校では「永沢君をはげます会」が開催された。「なんだよこの会…」と、ドン引きするクラスメイトたちをよそに、学級委員の丸尾君はみんなに無理やり永沢君を励ます言葉を促していく。

 がっくりとうなだれ、それをただ聞いているだけの永沢君。その後、みんなで『手のひらを太陽に』を歌わされるなど、カオスな展開は続いていく。

 そして会の終わりにコメントを求められた彼は「…みんなはいいよな……火事にならなかったんだから…」と、一言。それを聞いたクラスメイトたちが水を打ったように静まり返ったところで、この話は終わる。

 永沢君を励ますつもりが、ますます落ち込ませるというなんとも後味の悪い結末。この話は、火事の野次馬をしに行くまる子と友蔵にはじまり、人間のドライな部分をリアルに表したエピソードともいえるだろう。

■これぞリアルな食物連鎖…「まるちゃん 熱帯魚を飼う」の巻

 コミックス7巻に掲載されている「まるちゃん 熱帯魚を飼う」の巻は、タイトルからなんだか嫌な予感がしてしまうエピソードだ。

 ある日、まる子は知り合いからもらったグッピーを飼い始め、その様子を親友・たまちゃんと一緒に鑑賞していた。しかし水槽の中がさみしいと思った2人はビー玉を入れ、やがて“ザリガニも水槽にいれたらより自然の環境に近くなるのでは”というアイデアのもと、ザリガニもグッピーの水槽の中に入れてしまうのだ。結果、グッピーはすべてザリガニに食べられて全滅してしまうのである。

 現代でこの話が描かれていたなら「ザリガニとグッピーを一緒の水槽に入れるなんて!」と、憤る人もいるだろう。しかし、昭和当時はスマホなんてなく、グッピーの飼い方なんてすぐに調べることもできなかった。そのため、当時の子どもたちは自分が良いと思ったことをすぐに実践していたように思う。

 筆者が子どもの頃も、虫かごに違う種類の虫を入れてしまい、片方が食べられてしまった……なんて話は多かった記憶がある。リアルな食物連鎖を目の前で見せられた、なんとも切ないエピソードだ。

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