■ハードケース版の『パックマン』や『マッピー』が存在する!?

 「ナムコット」は、ナムコのコンシューマブランドで、今はもうありません。ナムコットブランドのパッケージの話をしますと、ファミコン18作目の『スカイキッド』まではプラスチックトレイなしの小さな紙箱が、19作目の『スーパーゼビウス ガンプの謎』からは樹脂性のハードケースが使われています。

 しかし、1作目の『ギャラクシアン』、2作目の『パックマン』、4作目の『マッピー』、5作目の『ギャラガ』、6作目の『ディグダグ』の計5タイトルには、ハードケース版が存在するんです。これは1990年代に入ってから再販されたもの。“ファミコン末期”ということもあって、たいへん数が少なく、稀少価値があります。

 以前にも触れましたが、ファミコンのカセットは、基本的に任天堂が各メーカーからの委託を受けて生産していました。でも、ナムコは自社生産していた数少ないメーカーのひとつ。任天堂に生産を委託するには、決められた最低数量以上を発注する必要がありましたが、自社生産していたナムコは、少量しか作らないことも容易だったのでしょう。

 現在、当店では『パックマン』の通常版が8250円(税込)なのに対し、ハードケース版は45100円(税込)、また『ギャラクシアン』の通常版が6600円(税込)なのに対し、ハードケース版は35200円(税込)となっています。ほかの3タイトルも39600円(税込)で販売中です。ちなみに、当時はそれぞれ4500円でした。

■ゲーセンで遊ぶのに向いてない!? 攻略本の必要性を感じる内容

 『ドルアーガの塔』に話を戻しましょう。私の初めて買ったファミコンのカセットは『ドルアーガの塔』でした。もともとアーケードゲームなんですけど、RPGのような要素があり、ゲームセンターで遊ぶようなタイトルじゃないと感じていたんです。

 主人公が囚われのヒロインを助けるために60階建ての塔を登っていくという物語。上のフロアへ進むには各階に隠されたアイテムが必要になるんですが、出現の条件は普通に遊んでいても、とうていわかるようなものじゃないんですよ。インターネットやSNSもない時代なので、調べることもできない。一部のゲーセンでは、ノートで情報交換が行われていたって聞きますけど、私の周りではなかったですね。

 それが家で遊べるというから「なんて素晴らしいんだろう!」と思うと同時に、攻略本の必要性をすごく感じていました。そうしたら当時、『ドルアーガの塔』は関連本がたくさん発売されて、ゲーム攻略本のさきがけ的な存在にもなったんですよね。実際ファミコン版を遊んでみると、攻略本を見ながらゲームを進めていくのがとても楽しかったですね。

 篠崎雄一郎さんによるキャラクターデザインも大好きでしたね。その後、私もゲーム会社でドット絵を描く仕事に就きましたが、篠崎さんはその道のレジェンドで、尊敬しています。最近はゲームのイベントなどで直接お会いすることもできるようになり、本当にうれしいです。

 

※ソフトの値段や状態などは2025年4月のものです。

【プロフィール】
大竹剛(おおたけ・つよし)
「レトロゲーム」に造詣が深い“元ドット絵職人”。ゲームメーカー「テクノスジャパン」で、主に『くにおくん』シリーズにドッターとして参加。現在は「ハードオフTOKYOラボ吉祥寺店」で店長を務める。本人もレトロなゲームのコレクター。

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