■一人、また一人と変わっていく…「光る円盤!オーベムたちの街!!」
ゲーム版の『ポケットモンスター ブラック・ホワイト』の発売に合わせ、アニメ版も『ポケットモンスター ベストウイッシュ』と、タイトルを刷新したシーズン2。このシーズンで登場したトラウマ回が「光る円盤! オーベムたちの街!!」である。
オオキナ島のポケモンセンターで一夜を明かしたサトシたちが目を覚ますと、仲間たちに異変が起きていた。一緒に宿泊していたデントやアイリス、さらにはピカチュウやキバゴまでもが、ブレインポケモン・オーベムと同じ顔になっていたのである。
驚くサトシだったが、異変はこれだけにとどまらない。仲間たちだけではなく、なんと街中の人々が同様にオーベムの顔に変化していたのだ。
わけが分からず混乱するサトシは、相棒・ニャースの行方が分からなくなったロケット団と手を組み、この謎の事態を解明していくこととなる。
実はこれ、タイトルにもなっている「円盤」に乗り飛来したオーベムたちが、円盤の貴重な部品を失くしてしまったことが原因で巻き起こった事件であった。オーベムたちは失った「おまもりこばん」を探すため、街の人々に暗示をかけていたというわけである。
最終的には「おまもりこばん」を返すことで人々は元に戻るが、目的のためにポケモンが人々を洗脳していた……と考えると、ちょっと薄ら寒い感覚を抱いてしまう。
なにより、仲間をはじめ街の人々がオーベムの顔になり、サトシらが孤立していく姿は非常に不穏だった。日常が何者かに浸食され塗り替えられていく……幽霊や怪物とはまた違う、変化球の恐怖を味わうことができるエピソードだった。
オリジナルの世界観や展開が楽しい「アニポケ」シリーズだが、ときには今回紹介したように、思わぬ恐怖演出で視聴者に衝撃を与えるエピソードも登場している。
どれも基本的にはほっこりとしたエンドを迎えるのだが、随所に差し込まれる不穏な演出は、観る者の心に強烈な印象を残す。
幼少期、何気なくアニメを見ていて、思わずトラウマになってしまったファンも多いのではないだろうか。