
2022年12月、放送開始から約25年目にして主人公・サトシの交代が発表され、大きな話題を呼んだアニメ『ポケットモンスター』。
個性豊かなポケモンたちが登場し、明るくワクワクするようなエピソードが多い「アニポケ」だが、ときにはこれまでとは違う恐怖演出で観る者にトラウマを残してしまった回も存在する。
今回は、可愛くて楽しいだけではない、アニポケで描かれた珠玉のトラウマ回について見ていこう。
※本記事には作品の内容を含みます
■謎の少女の正体は…「放課後はゴーストタイム!?」
アニポケにはホラーテイストなエピソードがたびたび登場しているが、『ポケットモンスター ダイヤモンド・パール』第90話「放課後はゴーストタイム!?」は、その中でも異彩を放つ回で、視聴者をゾッとさせた。
この回のテーマは、夏の風物詩である「肝試し」だ。舞台はポケモンサマースクール。プログラムの一環として肝試しが開催され、サトシたちはペアを組み、近くの山にある遺跡へ向かうこととなる。
しかし、パートナーを探していた少年・コウヘイの前に謎の少女が姿を現したあたりから、不穏な空気が漂い始める。その少女とともに肝試しに参加するコウヘイだったが、なんと少女に誘われたことで崖から落とされかけてしまうのだ。
さらにその後、少女はサトシたちの前にも姿を現し、彼らを遺跡の奥へと誘う。サトシたちも危機に陥るが、コウヘイ同様、野生のヨノワールが間一髪のところで救出してくれた。
これまで、ヨノワールがすべての元凶だと誤解していたサトシたちだったが、実際のところ、彼が少女の魔の手から子どもたちを守ってくれていたのである。
このエピソードが不気味なのは、謎の少女の正体や目的が最後までいっさい明確にならない点だろう。
髪で目元が隠れ、表情が見えない少女の姿はとにかく奇怪。また、最初こそ少女の声で語り掛けてくるものの、徐々に声色が大人の男性のものに変化していくのも、彼女が“人間ならざる何か”であることを示唆している。
遺跡に宿る怨念が生者である子どもたちを霊界へと引きずり込もうとしたのか……「肝試しの参加者の一人が実はあの世の者だった」という、ホラー映画顔負けのトラウマ回だった。
■変貌してしまった仲間の姿に絶句…「ゴーストVSエスパー!」
アニポケでは原作同様、個性的なジムリーダーたちが登場し、サトシと激戦を繰り広げる。そのなかで思わぬホラー描写が飛び出したのが、『ポケットモンスター』第24話「ゴーストVSエスパー!」である。
この回で登場するのは、初代『ポケットモンスター 赤・緑』においてエスパータイプの使い手としてプレイヤーの前に立ちはだかる、ジムリーダー・ナツメだ。
かつてナツメに敗北を喫したサトシは、対策としてゆうれいポケモンのゴーストを加え、リベンジを狙う。しかし、バトルが始まっても肝心のゴーストが姿を現さず、サトシは困惑。仕方なくほかのポケモンで戦おうとするが、前回の苦い経験からポケモンたちは戦う姿勢を見せようとしなかった。
予想外の事態に思わず試合放棄をするサトシ。だが、ナツメは彼の逃走を許さず、なんと超能力でタケシ、カスミを人形に変えてしまうのだ。
気まぐれでお調子者のゴーストにサトシたちが終始振り回される展開で、最後はナツメすらもその笑いのセンスで打破されてしまうというほっこりとする展開で締められるこの回。だがその一方、仲間である二人が人形に変えられてしまうという衝撃シーンに驚いてしまった人も多いだろう。
アニポケではナツメもどこか無機質な性格の人物として描かれていることが、より一層、恐怖と不安を煽る要因になっていた。タイトル通り、ゴーストとエスパーの激戦が展開されると期待していた視聴者を、思わぬホラー展開で震撼させたエピソードである。