■悪人なら即アウト!? 妄想が広がる最強技「アクマイト光線」
次は占いババの格闘試合にて、占いババの選手4人目として登場し、悟空と対戦したアックマン。彼が放った「アクマイト光線」も、インパクトの大きい技だった。
試合が始まり、悟空に一方的にやられるアックマン。“ほんとうの力をみせてやる”と、こめかみに指を当てて気を集中し、そのまま渦を巻くような光線を放つ。その威力は恐ろしく、相手にほんのわずかでも「悪の心」があれば、それを増幅・爆発させてしまうという、まさに悪人キラーの技だ。
悟空にはまったく悪の心がなかったため不発に終わったが、もし相手がピッコロ大魔王やフリーザ、あるいはかつてのベジータだったなら、理屈の上では即死すらあり得る。ゆえにこのアクマイト光線は、ファンの間では「最強の技なのでは?」と囁かれてきた。
しかし、鳥山さん自らが読者からの質問に答える形で「たぶん相手に当たらないし、もうそんなレベルの闘いじゃないんだと思います」とコメントしており、強敵には通用しない技として公式に否定された。
それでも、技の面白さや「もしも敵に使えていたら……?」という妄想の余地の広さから、今なお記憶に残る一発技であることは間違いない。
■ピッコロから悟飯、そして…師弟の絆が宿る「魔閃光」
ナッパ戦でピッコロが命を懸けて自分をかばってくれた直後、悟飯が怒りから放った「魔閃光(ませんこう)」。額の前で両手を揃えて放つという独特の構えと「魔」の字を冠する技名は、まさにピッコロ譲りの技であり、師弟関係の絆を感じさせる。
その一撃は圧倒的な実力差を前にナッパに拳ではじかれてしまうものの、「チビのくせにすげえことやってくれるじゃねえか……」と驚かせるほどの威力を見せた。原作での使用はこの一度きりながら、のちの作品では技の“継承”と“進化”が描かれている。
劇場版『ドラゴンボールZ 燃えつきろ!! 熱戦・烈戦・超激戦』(1993年)では、悟飯と未来トランクスが並んで魔閃光を放つ場面が登場。実はこの2人は荒廃した未来世界において師弟関係にあり、魔閃光が再び“師から弟子へ”受け継がれた形となった。
また『ドラゴンボール超』「“未来”トランクス編」では、トランクスがこの技をゴクウブラックに対して使用。そして「宇宙サバイバル編」では、悟飯自身が長い年月を経て再び魔閃光を披露した。
極めつけは、漫画版「銀河パトロール囚人編」。悟飯の魔閃光とピッコロの魔貫光殺砲(まかんこうさっぽう)が合体して放たれる師弟連携技「魔閃光殺砲(ませんこうさっぽう)」へと進化を遂げる。
原作での登場は一度きりながら、魔閃光は単なる一発技にとどまらず、“師弟の系譜”を象徴する特別な技となった。
『ドラゴンボール』の魅力は、ただ強さやド派手な演出にあるのではない。キャラクターの個性や物語との絶妙な絡みから生まれる多彩な技こそが、作品に奥行きを与えている。
たとえ1度しか使われなかったとしても、ユニークなアイデアや背景と結びついた技は、観る者の記憶に強く焼き付く。それこそが『ドラゴンボール』の真骨頂だろう。
今回紹介したもの以外にも、使用回数こそ少ないが印象に残る技はまだまだ存在する。あなたの心に残っているのは、どの一撃だろうか。