
魅力ある必殺技が飛び交う、鳥山明さんの『ドラゴンボール』の世界。「かめはめ波」や「元気玉」のように繰り返し使われる定番技がある一方で、たった1度しか使われなかったにもかかわらず、強烈な印象を残した技も存在する。
今回はそんな「1度きり」ながらファンの記憶に残り続けるインパクト抜群の技を振り返ってみたい。本作ならではのユニークな技の数々を、あなたはいくつ覚えているだろうか?
※本記事には作品の内容を含みます
■即興で生まれた“獣スタイル”「狂拳」&「猿拳」
第21回天下一武道会の決勝戦にて、対戦するジャッキー・チュン(変装した亀仙人)の「酔拳」に対抗し、少年・悟空が即興で繰り出したのが「狂拳」と「猿拳」である。
「狂拳」は犬のように四足歩行になり、鋭い目つきで「わんっわわわん!!!」と吠えながら相手に飛びかかる、まさに猛犬のようなスタイルの攻撃だ。だがこれはフェイントであり、驚いて目を閉じたジャッキー・チュンの背後に回り込み、後頭部に強烈な蹴りを叩き込んだ。
続く「猿拳」は、猿のように跳ね回り、尻尾で足を払ったり、手の爪で引っ掻いたりする自由奔放でトリッキーな戦法である。どちらも技名や見た目はコミカルだが、柔軟な発想と即座に対抗策を編み出して戦う悟空らしい技であった。
そして皮肉なことに、その直後、悟空は満月を見て本物の“大猿”へと変身する。ふざけ半分に見えた「狂拳」や「猿拳」が、まさか本物の獣になって大暴れする伏線だったとは、当の悟空ですら思いもしなかっただろう。
■ジャッキー・チュンの老練トリック技「よいこ眠眠拳」&「萬國驚天掌」
上述した悟空の奇抜な技に対抗してジャッキー・チュンが繰り出したのが「よいこ眠眠拳」と「萬國驚天掌(ばんこくびっくりしょう)」だ。
「よいこ眠眠拳」は「ね~~んねぇん〜ころぉり~よ~~~」と、謎の子守唄(?)で相手を眠らせる催眠術的な技だ。純粋無垢な悟空には効果抜群で、あっさり夢の世界へ……。
卑怯とも言えるこの技に、実況アナウンサーが「武術ではなく催眠術では…」と疑問を投げかけるも「なにをいうか! りっぱな武術ではないか!」と、ジャッキー・チュンは断言し、カウントを促す。
そんななか機転を利かせたブルマの「孫くんご飯の時間よーーっ!!!!」の声で飛び起きた悟空。その後、満を持して繰り出されたのが、超奥義「萬國驚天掌」である。
両手を広げて気を溜め、電撃と磁力で相手の身体を空中に固定し、連続的に感電させるという恐ろしいこの技。完全に動きを封じられてしまい、それでも電撃に耐える悟空であったが、ついには「ま…まいっ…」とギブアップしかける。だがその瞬間、上空にあった満月を偶然見て大猿へと変身。技の拘束から奇跡的に脱出するのだった。
なお、この「萬國驚天掌」、原作ではこの1度きりの登場だったが、後年の『ドラゴンボール超』「宇宙サバイバル編」で、まさかの再登場を果たしている。第3宇宙の戦士ザ・プリーチョを空中に固定し、天津飯の「新気功砲」との連携で見事勝利に貢献していた。