「え、終わってなかったの!?」マンガ界で愛され続ける「未完の名作」たち 『キャプテンハーロック』に『火の鳥』、『超人ロック』も…の画像
松本零士『宇宙海賊キャプテンハーロック 1』(秋田書店)

 近年「マンガ大国」と呼ばれて久しい日本では、日々新たな作品が数えきれないほど誕生している。

 大好きな連載作品であれば、次の話が掲載される日が待ち遠しくなり、万が一休載のときはガッカリすることもあるだろう。そして、どのようなかたちで物語が完結を迎えるのか、ワクワクしながら追いかけ続けるのだ。

 しかし、マンガ作品のなかには諸般の事情で物語が完結する前に連載が終わってしまい、やむなく「未完」となってしまうケースもある。

 それは作品を生み出す漫画家にとっても、不本意な出来事であることが多いようだ。その悔しさをバネに別のヒット作を生み出したり、あるいは別の媒体に移って完結させたりすることもある。

聖闘士星矢』などの大ヒット作を生み出した車田正美さんが『週刊少年ジャンプ』(集英社)で連載していた『男坂』は、読者の支持を得られず打ち切りになったことを車田先生自らが認めている。その最終話となった回の最終ページには、無念の意味をこめて「未完」の文字で締めくくっていた。

 また、同じく『少年ジャンプ』に『シャーマンキング』を連載していた武井宏之さんも、最終回に「ミカン」の絵を添え、作品が「未完(ミカン)」であることを比喩したのは有名な話だ。

 とはいえ両作品はのちに発表媒体を変え、未完だった作品をしっかり「完結」させている。

 そして未完のまま終わるのは無名の作品だけでなく、ときには名作と呼ばれる有名作品にも起こりうる。そこで今回は、筆者が個人的に最終回まで見届けたかった「未完で終わってしまった名作マンガ」を振り返ってみたい。

※本記事には各作品の核心部分の内容を含みます。

■アニメにもなった超有名作が未完のまま終了

宇宙戦艦ヤマト』や『銀河鉄道999』など、日本を代表するSF漫画を数多く世に送り出した巨匠、松本零士さん。

 そのなかでも漫画誌『プレイコミック』(秋田書店)にて1977年から連載された『宇宙海賊キャプテンハーロック』は、かなり硬派な作品。1978年にはテレビアニメ化もされ、抜群の知名度を誇るスペースオペラである。

 作品の舞台は2977年。腐敗した地球に見切りをつけ、宇宙海賊となった「ハーロック」が、女型の異星人・マゾーンの脅威から地球を守るため、海賊戦艦「アルカディア号」に乗艦して戦う物語だ。

 同作の主人公のハーロックは、ほかの松本作品にまで登場するほどの人気キャラ。松本さんはインタビューで「ハーロックは自分自身」と語るほど、思い入れのあるキャラクターのようだ。

 そんな『宇宙海賊キャプテンハーロック』の最終回となった第55話の最後には、「『宇宙海賊キャプテンハーロック』第一部 完」と記載されていた。

 つまり1979年に掲載された第55話は、“第一部”が終わっただけのはずだった。しかしそれ以降、第二部が始まることはなく、2023年2月に松本さんが亡くなられたため、永遠に未完の作品となった。

 その第一部の最終回では、ハーロックが友と青春の日々をすごした惑星ヘビーメルダーに永遠の別れを告げるため立ち寄る。しかし、マゾーンのキャラバン(移民船)が地球の目前まで迫っており、ハーロックとアルカディア号の乗組員たちが「戦いの海へ船出したのだ」というメッセージで締めくくられた。

 そのためマゾーンとハーロックの決着はついていないし、地球への脅威はそのまま残された状況だったのだ。

 なお、1978年にテレビアニメ化された『宇宙海賊キャプテンハーロック』は、オリジナル要素が多かったものの、第41話「決闘! 女王対ハーロック」の回で女王ラフレシアと一旦決着をつけたことで侵略を阻止。最終回(第42話)「さらば宇宙の無法者」では、マゾーンの残党と戦ったあと、荒廃した地球を若者たちに託して宇宙に帰るという、きれいな終わり方をしている。

 その後、松本零士さんが原作を務め、嶋星光壱さんが描いた『キャプテンハーロック ~次元航海~』が『チャンピオンRED』(秋田書店)で連載。原作のプロットを整理して再解釈を加えた「リブート作品」だが、その最終回は「キャプテンハーロック次元航海 第一部/おわり」と、松本さんの原作漫画と同じかたちで終わっている。

 ちなみに『チャンピオンRED』2014年10月号には、松本さんが手がけた読み切り漫画『宇宙海賊キャプテンハーロック 銀河聖女ルナーラ』が掲載。これが「本家ハーロック」の最後の作品となった。

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