『名探偵コナン』黒ずくめの組織に関連する「未回収の伏線」ベルモットと“あの方”との関係、謎のソフトへの執着など…の画像
『名探偵コナン 黒ずくめの組織セレクション 黒の策略』 著/酒井匙、原作/絵/青山剛昌(小学館ジュニア文庫)

 青山剛昌氏による『名探偵コナン』の新作映画が好調な中、未回収の伏線が今後どう回収されていくのか、注目が集まっている。本作は長年連載が続いているので、そもそもどんな伏線が描かれているのか忘れてしまっている読者も少なくないはずだ。

 本作の大きなテーマのひとつは、主人公・江戸川コナン(工藤新一)が小さくなった体を元に戻すことだろう。そのために避けられないのが、“黒ずくめの組織”との対決だ。そこでこの記事では、組織にまつわる未回収の伏線を整理・考察していこう。

 

※本記事には作品の核心部分の内容を含みます

■黒の組織のそもそもの目的ってやっぱりお金?

 新一が幼児化したのは、組織の幹部・ジンにAPTX4869という薬を飲まされたせいである。ジンはこの薬について“死体から検出されない毒”と語っており、当初は殺人のために使われる便利アイテムと思われた。

 しかし、実はこの薬には幼児化という副作用が隠されており、むしろそれが本当の効果ととれるような描写も出てくるようになる。薬の開発にかかわった宮野志保(灰原哀の本来の姿)が不老不死のお守りをもらえる祭りに訪れていること、ピスコが幼児化にかんして「まさかここまで君が進めていたとは…」と感嘆しているような場面があることなどがそうだ。

 ちなみにAPTX4869は当初志保の両親によって開発されたが、後に志保が引き継いだ。組織にとっても、非常に重要な研究であるのは間違いない。これらを踏まえると、幼児化=若返りが「組織の目的達成のための手段」とも考えられる。

 ではなぜ若返りが必要なのか……というと、2014年の『月刊 名探偵コナン新聞 ホワイトデー号』で、青山氏は組織の目的について“金の流れを牛耳ること”と明かしたことがある。

 なるほど、莫大な財産を築いている資産家は、世界中の企業や政府にも影響力があるもの。薬で若返れば、その力や財産を永久的に維持するのも夢ではなさそうだ。そうして裏社会および世界のトップに君臨し続けるのが、組織の目的なのだろうか?

■板倉のソフトは幼児化(若返り)をごまかすためのツール?

 組織はCGクリエイターの板倉卓に、彼が開発していた何らかのソフトを高額で買い取ると申し出ていた。詳細は不明だが、視覚効果に関係するものなのは間違いないだろう。

 板倉は目を患ったために一時はソフト開発を断念していたものの、組織に脅されて要求を受け入れざるをえなくなった。しかし最終的には、「我々人間のために(開発を)断念した」と日記に書き残されている。

 電話で接触してきたのは“高飛車な女”とあり、まず間違いなくベルモットだろう。しかし、新一の母・工藤有希子が言うには、女優としてのベルモット(シャロン・ヴィンヤード)と板倉は犬猿の仲らしい。それでもベルモットがコンタクトを取っているあたり、よほど組織にとって重要なソフトといえる。

 すでに述べた通り、「組織の目的が薬による若返りで資産を維持すること」だとしよう。そのためには、資産家の子や孫、もしくは何らかの血縁者として若返った本人が成りすますのが簡単だろう。

 コナンや灰原のように、幼児化しても記憶が大人のままなら影響力はそのままだが、まったく同じ顔立ちだと不自然だし、世間で大騒ぎになりかねない。

 そこで、「似てはいるが少し違う顔立ち」をCGでデータ化し、整形技術と組み合わせて新しい身分を作るためのフォーマットを板倉がプログラム化していたとしたら……。薬と一緒に使えば組織がやりたい放題できてしまうことは、想像に難くない。

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