
今年29周年を迎えたゲーム『ポケットモンスター』シリーズ(任天堂)の長い歴史の間では、「強いポケモン」と「弱いポケモン」が何度も入れ替わってきた。とくに対戦では、過去作では使い勝手の悪かったポケモンが、続編では誰もが使う強キャラにのし上がった……なんて話も少なくない。
そこで今回は『ポケットモンスター 赤・緑(以下、赤・緑)』や『ポケットモンスター 金・銀(以下、金・銀)』の初期シリーズ作では使いづらかったのに、最新作『ポケットモンスター スカーレット・ヴァイオレット(以下、SV)』の対戦では大活躍しているポケモンを紹介していく。
※本記事には各作品の内容を含みます
■もう「ふぶき」じゃ倒されない! カイリュー
まずは『赤・緑』で唯一のドラゴンタイプを持つ、ミニリュウ系の最終進化・カイリューだ。
『赤・緑』時代でもドラゴンにふさわしいステータスを誇っていたカイリューだが、こおりタイプの攻撃は4倍ダメージという致命的な弱点を抱えている。当時は「ふぶき」が全盛を極めており、カイリューはいわば“ついで”に倒されてしまう悲しきポジションだった。
だが、『ポケットモンスター ブラック・ホワイト』で特性(それぞれのポケモンが技とは別に覚えている専用スキル)「マルチスケイル」を獲得してから、カイリューの下克上が始まる。
「マルチスケイル」は“HPが満タンであれば受けるダメージを半減する”というとんでもない性能で、4倍弱点の克服を通り越し、全ポケモン屈指の耐久力を得たのだ。
「マルチスケイル」を得たカイリューは一気に対戦の最強格へ昇格し、『SV』でもその強さは変わらない。高すぎる耐久力で相手を寄せ付けず、「げきりん」や「じしん」といったドラゴンらしいド派手な技で攻めまくる唯一無二のアタッカーに登り詰めた。
かつて「ふぶき」の陰に隠れたカイリューが今はドラゴンらしく大暴れしているのは、『赤・緑』を遊んでいた人には感じ入るものがあるのではないだろうか。
■伝説同士の戦いを左右するトリックスターに! メタモン
メタモンといえば、唯一覚える「へんしん」で相手のポケモンに変身するユニークなポケモンだ。『赤・緑』から登場しているが、バトルでは相手に変身する前に倒されるのが当たり前で、いわゆる「ネタポケモン」の扱いだった。
そんなメタモンが『SV』では、伝説のポケモン同士のバトルに参戦し、あまつさえ最強の名を欲しいままにしているのはご存じだろうか。
メタモン躍進の秘密は、“場に出た瞬間に相手のポケモンに変身する”という効果を持つ新特性「かわりもの」のおかげだ。おかげで変身前に倒されることもなくなったのだが、「かわりもの」の真価は、強力な伝説ポケモンにもノーリスクで変身できる点にある。
『ポケモン』シリーズの大会では、伝説ポケモンの使用が制限されていることが多い。『赤・緑』ならばミュウツー、『金・銀』ならばホウオウやルギアといったポケモンは、『SV』の公式ルールではパーティに1匹までと制限されている。
では、そんな状況で相手のポケモンに変身できるメタモンがいるとどうなるか——答えは「自分だけ伝説ポケモンが2匹使える」だ。相手だけミュウツーを2匹使ってくるポケモンバトルをイメージしてほしい。理不尽ではないだろうか? その理不尽を実現するのが『SV』のメタモンである。
どこか間の抜けた表情をしているメタモンが、ルールの穴を突くかのような「へんしん」で伝説同士のバトルに割り込む。長く続く『ポケモン』シリーズでは、そんな奇妙な出来事も起こりうるのだ。