
大ヒットを生み出した人気漫画家たちは、必ずしも最初からヒット作を生み出しているわけではない。中には、編集者からのアドバイスを受けて路線を変更したり、思い通りの作品を描かせてもらえなかったりといったケースもあるだろう。
だからこそ、代表作とデビュー作の雰囲気が大きく違う漫画家も少なくない。そんな「今と違いすぎる作風」に驚かされた、人気漫画家の連載デビュー作を振り返っていこう。
※本記事には各作品の内容を含みます
■圧倒的画力で繰り広げられるギャグ漫画!小畑健『CYBORGじいちゃんG』
『ヒカルの碁』や『DEATH NOTE』(集英社)で知られる小畑健氏は、圧倒的な画力に定評があり、作画担当を務めることが多い。数多くの作品を生み出し、その多くがヒットしているのがスゴい。それも、原作担当の意図を汲み取り絵で表現する巧みな技術があってこそだろう。
そんな小畑氏の連載デビュー作は『CYBORGじいちゃんG』(集英社)である。この作品は小畑氏が高校生の時に佳作入賞したもので、1989年に連載スタートとなった。なお、当時は「小畑健」ではなく「土方茂」というペンネームで活動していた。
『CYBORGじいちゃんG』は全4巻で、内容は主人公である「じいちゃん」がサイボーグに生まれ変わり、ライバル科学者やその手下と戦うというものだ。
あらすじだけ見るとバトル漫画に思えるかもしれないが、そんなことはない。基本的にはギャグ漫画で、じいちゃんのドタバタ劇に家族が巻き込まれる日常が描かれている。その中で感動する話があったりド迫力のバトルシーンが展開されたりするのが特徴だ。
シリアスな印象の今とは作風でギャップを感じてしまうが、画力が高いのは当時からで、見る者を飽きさせない。時代が経っても色褪せない魅力を感じる作品だ。
■ドキドキのラブコメ冨樫義博『てんで性悪キューピッド』
次は冨樫義博氏の連載デビュー作を見ていこう。冨樫氏といえば『幽☆遊☆白書』、『HUNTER×HUNTER』(集英社)といった大人気バトル漫画の生みの親だ。手に汗握るバトルシーンに、魅力的な登場人物が繰り広げる人間ドラマ……など、見どころたっぷりの作品は多くの読者を惹きつけてきた。
そんな冨樫氏のデビュー作は、お色気ギャグ漫画の『てんで性悪キューピッド』(集英社)である。純情少年・鯉昇竜次に、美少女悪魔が「女性の魅力」を身をもって教えこむという内容で、今では考えられない過激な描写も多かった。
同時期に連載していた桂正和氏の『電影少女』(集英社)と並んで、かなりドキドキさせられた記憶が今でも残っている。
ちなみにこの作品については、冨樫氏本人が”ウ冠の富樫さんの作品”と、自分の作品として認めないような姿勢をしめしてもいる。“毎週一話漫画を作ることの難しさに打ちのめされた”とも語っており、新人ゆえの苦労や葛藤も多かったのかもしれない。