■命を削って挑んだ超重量級の「アクション」

 そして、王騎の物語における最大の見せ場が、第4作『キングダム 大将軍の帰還』で描かれた宿敵・龐煖との一騎打ちだ。巨大な矛と矛が激しくぶつかり合い、その衝撃で矛がしなり、馬ごと相手を吹き飛ばす。まさに原作屈指の伝説的バトルが、ついに映像化された。

 このクライマックスに向けて、大沢さんは撮影前から徹底したトレーニングを積み重ねていた。単独での稽古に加え、龐煖を演じる吉川晃司さんとの合同稽古も幾度となくおこなわれ、リハーサル用の矛が何本も壊れてしまうほど激しく打ち込み続けた。体にはあざが絶えず、まさに体を削るような稽古だったという。

 死闘のシーンは、5〜6日間にわたって朝から晩まで撮影が続けられ、ケガ人が続出する現場だったという。大沢さんも「僕も吉川さんも痛みが積み重なってきていて、そうしたリアルな痛みも作品の中にそのまま投影されています」と振り返っていた。

 日本映画では極めて珍しい、命を削るような超重量級アクション。その現場には、大沢さんをはじめとする演者たち、そして撮影スタッフの覚悟が確かに宿っていた。その熱量こそが、王騎と龐煖の命がけの戦いに、圧倒的な迫力をもたらしたのだろう。

 

 肉体改造。独特なセリフ回し。そして、命を削るような殺陣。どれかひとつでも欠けていれば、“実写の王騎”は成立しなかっただろう。

 2019年の第1作『キングダム』から、準備期間を含めておよそ8年。撮影を振り返り「(王騎を)つかみたいと思いながら、もがき続けた8年間でした」と語っていた大沢さんだが、その圧倒的な存在感は作品に、そして観る者の心に確かに刻まれた。

 大沢さんは王騎を“演じた”のではない。“王騎として生きた”のだ。ぜひこの機会に彼の名演が光る実写版『キングダム』シリーズを、あらためて振り返ってみてはいかがだろうか。

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