
松本零士さんの『銀河鉄道999』は、宇宙を旅する少年・星野鉄郎と、謎の美女メーテルが、999号に乗って未知なる星を巡るストーリーだ。そもそも、この宇宙の旅がはじまったきっかけは、機械伯爵に母親を殺された鉄郎がその復讐を果たすため「機械の身体」を手にしようとしたからだ。
しかし作中にはさまざまな機械化人が登場し、鉄郎は彼らと会うたびにその特性に驚いている。そもそも鉄郎が目指した機械化人とは、どのようなものだったのだろうか。
ここでは、作中に登場した機械化人の特徴や、機械化人のメリット、デメリットなど、驚きの設定を振り返りたい。
※本記事には各作品の内容を含みます
■復讐を果たすために機械の体を…何もわからない少年だからこそできた宇宙の旅
『銀河鉄道999』は、鉄郎の母親が機械伯爵の人間狩りによって殺されるという、衝撃的な展開から始まる。
999号に乗る前に機械伯爵の邸宅へと乗り込み、母を殺した機械伯爵を含む機械化人たちに銃を乱射し、復讐を果たしている。それでも気の済まない鉄郎は、“いつか機械の体を手にし、地球にいる機械化人をみな殺しにする”という復讐心のもと、999号に乗り込むのだ。
鉄郎は999号に乗る時点では、機械化人がどのような存在なのかをまだはっきりとは理解していなかった。“永遠に生きられる機械の体を手に入れるため、列車に乗る”と覚悟を決めてはいたものの、出発前にパスを盗まれ、爆発騒ぎに巻き込まれるなど、波乱の幕開けとなる。
その騒動の中で、メーテルが「機械の体を手に入れるのには それだけの覚悟がいるのよ」と語りかけると、鉄郎は不安げに黙り込んでしまう。
当時の鉄郎は母親を殺された恨みと悲しみで頭がいっぱいになっており、冷静に物事を考える余裕などなかったのだろう。ただ「機械の体を手に入れる」という目的だけで行動した鉄郎だったが、しかしその信念も旅の中で出会うさまざまな機械化人たちとの交流を通じて、少しずつ揺らいでいくのであった。
■いろいろな機械化人たちの存在、本当に望んでいたものとは違う!?
鉄郎は999号の旅の途中で多くの機械化人たちに出会う。
たとえば「火星の赤い風」のエピソードで、鉄郎のパスを奪った機械化人のゼロニモ。彼は鉄郎から流れる赤い血を見て、自ら撃たれることを選ぶ。彼は死に際にパスを返し、生身の体を持つ鉄郎をうらやましいと言って死んでいった。
「透明の女 ガラスのクレア」に登場する、999号のウェイトレス・クレアは、全身がクリスタルガラスでできた機械化人だった。美しいとほめる鉄郎に対し、クレアもまた「あなたのように影のできる体になりたい…」と鉄郎の体をうらやましがり、最後は鉄郎をかばって砕け散っていく。
さらに「枯葉の墓標」では全身が木製の機械化人・森木豊が登場する。彼は“ここで機械の身体を手にするには木製品が一番安かった”と話しており、機械伯爵のような体を手にするには相当なお金が必要であることを鉄郎に伝えている。
このように銀河鉄道の旅ではいろいろな種類の機械化人が登場し、鉄郎に影響を与えていく。鉄郎にかかわった機械化人の多くは「本当に機械の身体になって良いのかを、よく考えろ」という投げかけをするのだ。
彼らの生き様を見るうちに、機械化人とは何か、本当に自分がなりたいものは何なのかと、鉄郎にはさまざまな葛藤が生まれるのであった。