■町内総出で鉄郎たちのパスを捜索してくれた「これからの星」
基本的に誰かにパスを盗まれて失くしてしまう鉄郎だが、なかには例外もある。それがコミックス7巻「これからの星」でのエピソードだ。
「これからの星」に到着し、古い旅館に宿泊した鉄郎とメーテルは、そこに住む奈美という娘と、その父親から豪快にもてなしを受ける。しかし“突発性台風”という暴風に巻き込まれホテルは全壊。2人はパスをはじめ、すべての持ち物を失ってしまうのだ。
途方にくれて駅前に座り込む鉄郎とメーテル。なすすべもない2人はそのまま眠りこんでしまうが、その後旅館の父娘が鉄郎たちのパスや荷物を駅まで届けてくれる。しかもそれらの荷物は、町内総出で探し集めてくれたのだという。
人情味あふれる良い話だが、鉄郎はパスを失くしたあと「あの旅館の父娘の笑顔が気になる。もしかしてパスは…」と、盗まれたのではないかと一度は疑っていた。メーテルはそれを叱責していたが、これまで多くの星で何度もパスを盗まれている鉄郎だからこそ、疑心暗鬼になってしまったのも無理はないだろう。
過酷な銀河鉄道の旅において、世の中捨てたもんじゃないことを実感させられるエピソードだった。
今回紹介したエピソード以外にも、鉄郎はとにかくパスを盗まれている。滞在先のホテルで入浴中に荷物を盗まれたり、トランクごと砂の中に引きずりこまれたり……。細心の注意を払っていても、停車する星ごとに特性があり、どういった住人か分からないため、対策は難しいだろう。
それでも鉄郎は持ち前の明るさと勇気で、最後は自らパスを取り返していることが多い。“失ったものを数えるより、得たものを大切にしろ”という言葉どおり、何かを失くしても、得たものを大切にして前向きに生きたいものである。