■命の恩人のために放つ命を込めた一撃「英雄の槍(グングニル)」

 「覇国」や「威国」と異なり、物理的な「エルバフの槍」を見せてくれたのが、「ドレスローザ編」に登場した巨人のハイルディンだ。

 トントンの実を食べたドンキホーテ海賊団のマッハバイスは、自身の体重を自在に操り超重量級のボディプレスでハイルディンを圧倒。しかしハイルディンは、全身の骨を折られながらも麦わらの一味への恩返しを果たすため、最後の力をふり絞って立ちあがる。

 体重を万トンまで増幅させて落下してくるマッハバイスに対し、ハイルディンは「くらえ…この命を!!」と、渾身の力を込めた拳「英雄の槍(グングニル)」を放つ。腕や足の骨は粉々になり、地面が砕けるほどの猛烈な衝撃を受けるもハイルディンは倒れず、やがてマッハバイスを上空に押し返し、見事勝利を収めた。

 己の拳を槍とするこの「グングニル」は、北欧神話における最高神・オーディンが持っていた槍の「グングニル」に由来していると思われる。オーディンの息子であるロキのいたずらを発端にドワーフ族が作った「グングニル」は、のちにオーディンに譲渡され“終末の戦い”(ラグナロク)まで使用された。

 北欧神話をモデルにしているとされる「エルバフ編」において、最新111巻で王子・ロキが登場していることをふまえると、ハイルディンが「英雄の槍(グングニル)」を自身の技として使うことにはさまざまな意味があるように感じられる。

 その槍は英雄から受け継いだものか、はたまた全巨人族の王になることを夢見るハイルディンが英雄に憧れて名付けた技か……こちらも「エルバフ編」にて、その真相に迫るような展開が描かれるかもしれない。

■2人の海の皇帝が若造どもの夢を破壊する「覇海」

 最後に「エルバフの槍」か定かではないが、“四皇”のカイドウとビッグ・マムによって放たれた「覇海」についても触れておきたい。

 鬼ヶ島のドクロドーム屋上で、ルフィ・ゾロ・ロー・キッド・キラーの新世代チーム対カイドウ・ビッグマムの“四皇”チームによる激しい戦いが繰り広げられる。

 攻め手を思案する新世代チームに対してカイドウとビッグ・マムは武器を構え、まるで爆発を打ち出すかのような技「覇海」を放つ。攻撃前にビッグ・マムは、5人中何人生き残れるかを余興のように試す意図を示していたが、驚くべきことにこの強烈な一撃をゾロがたった1人で防いでみせた。

 エネルギーを一点に集中し標的を貫くまさに槍のような印象の「覇国」に対して、「覇海」はより広範囲を一気に破壊して塵にするような印象だ。カイドウとビッグ・マムが久々に放った技であることや、エネルギーが分散していたことが幸いし、ゾロは1人で防ぐことができたのかもしれない。もちろん、シンプルに実力が十分だったという可能性もあるのだが……。

 「覇海」が「エルバフの槍」に該当するかは定かではなく、今後この技の詳細に関して言及されるのかも微妙なところだ。ともあれ、“四皇”2人が放ったこの一撃は、十分に「エルバフの槍」たり得る豪快な技であったことは間違いない。

 

 その驚異的な破壊力で標的を貫く「エルバフの槍」。果たしてその技そのものが“槍”なのか、実物として巨人族に伝わる最強の槍がどこかに存在しているのか、現状は未だ謎のままである。

 「エルバフ編」もまだまだ始まったばかり。本編がどのように展開していくのかも楽しみつつ、「エルバフの槍」に関する新たな情報が公開されることにも期待したいところである。

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