■忘れられなかった仲間と「かつての栄光」

 『ジークアクス』におけるマ・クベは中将にまで昇進し、軍事法廷を司っている。そして違反者は簡単に軍を追われる可能性があることが、第1話の戦艦「ソドン」のブリッジ内で語られていた。

 大きな戦争が終わり、表面上は平和な戦勝国となったジオンにおいて、マ・クベのような“政治”や“謀略”を得意とする人物がのし上がり、古い軍人のような邪魔な抵抗勢力を粛清していったことは容易に想像できる。

 第5話でガイアは「あんときガンダムに手柄を独り占めされてなきゃ、今も軍にいれたかもなぁ」と発言。赤いガンダムのパイロット「シャア・アズナブル」の目覚ましい活躍によって、彼らの存在感と影響力が薄れ、マ・クベのしかけた謀略や罠にハマったとも考えられる。

 そして劇中のクランバトルにおいて、黒い三連星のふたりは主流の「MAV戦術」を使おうとせず、いまだに「ジェット・ストリーム・アタック」に拘っていた。その結果、素人だと侮っていたニャアンがオメガサイコミュを起動したことにより、敗れることになる。

 初代ガンダムでのガイアの最期の言葉は「マッシュ、オルテガ、す……すまん!」であり、『ジークアクス』の最期は「クソ、マッシュがいてくれれば……!」というものだった。

 クランバトルは2対2の戦いなので、たとえマッシュがいても参戦はできないのだが、どちらの世界線においても最期の瞬間まで仲間である黒い三連星に対する強い想いが感じられた。

 そんな仲間想いの黒い三連星が、仲間(シュウジ)を盾にする非情な戦術をとったニャアンに敗れたのは、なんとも皮肉なものである。

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