■本心が見えないミステリアスNo.1「高木泰士」

 ブラストのリーダーで、ナナの保護者でもある高木泰士(ヤス)は、スキンヘッドでいかつい見た目をしているが、弁護士の卵であったり、人当たりが良かったりと魅力的な男性だ。サングラスの奥の素顔はスッキリとした顔立ちをしており、意外にも女性人気が高くファンも多い。

 ヤスは身寄りのないナナをいつも見守り、ブラストのドラマーとして上京したあとは同じく孤独な身の上である岡崎真一(シン)のことも気にかけていた。

 困っている人や悩みを抱える人を放っておけない性格なのか、同じ事務所に所属し、精神的に不安定になることもある篠田美雨に寄り添い、その後恋仲に発展する。

 しかしあらためて見てみると、ヤスは本心が見えず、ミステリアスな部分が多すぎる。ナナとの復縁をためらうレンに「ナナはおれがもらう」とけしかけてみたり、ナナに「あたしにベタ惚れじゃん?」と言われ「そーだな」と即答したりと、真意をはかりかねる発言もあった。

 懐が深くタクミのように感情を荒げる様子もないが、何を考えているのかが分からない男性だ。彼に惚れてしまったら、きっと苦労しそうだと思わずにはいられない。

■愛情を知らずに育った美少年「岡崎真一」

 作中屈指の美形といえば、ブラストのメンバーの岡崎真一(シン)だ。シンは当初、年齢をごまかしていたが、途中で15歳であることが判明する。

 スウェーデンにルーツがあるシンは複雑な出生で頼れる人もなく、女性の家を転々として暮らしてきた。その見た目から女性たちから引く手数多のため、生活には困っていなかったようだ。

 家庭的な魅力のある奈々を「ママ」と呼び、甘える姿はまだまだ子どもだが、酒にタバコ、売春、薬物と、なかなかアンダーグラウンドな日々を送っている。実際、彼の薬物がきっかけで、ブラストは活動休止にまで追い込まれていた。

 生まれ育った環境によって愛情に飢えているシンは、母性本能をくすぐるタイプだろう。作中ではトラネスの芹澤レイラと売春の延長で特別な関係になっていくが、レイラもだんだんとシンに惹かれていく。

 数年後、シンは俳優として大成し、芸能活動に邁進する姿が描かれている。可愛らしさの残る美少年から美しい青年へと成長を遂げており、ブラストの中では一番の出世頭ではないだろうか。

 とはいえ、普通ではない10代を過ごしてきたシンのような男性と恋をするのは、なかなかハードルが高いように思う。

 

 こうして見ると、『NANA』には実にバリエーション豊かな男性キャラがいることが分かる。見た目の美しさはもちろん、それぞれが強い個性を持っており、なんとも魅力的だ。

 とはいえ、今回紹介してきた男性キャラたちはみな、危うさを持ちあわせていることは間違いない。付き合うとしたら……と考えてみると、やはりどのキャラでも苦労しそうである……。

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