
1984年から『週刊少年ジャンプ』(集英社)にて連載が始まった、鳥山明さんの名作バトル漫画『ドラゴンボール』。本作の主人公・孫悟空といえば、なんといっても常識外れの強さと天真爛漫な性格が魅力だ。だが、彼の真価は“戦い方”そのものにも表れているように思う。
実際、パワー勝負が中心と思われがちな『ドラゴンボール』のバトルの中で、悟空はときに敵すら想定できない突飛な作戦を繰り出し、何度も勝利をもぎ取ってきた。今回は、そんな悟空の「戦術家」としての顔が際立つ、大胆なトンデモ秘策を振り返ってみよう。
※本記事には作品の内容を含みます
■「おめえの出番だぞ 悟飯!!」セル戦で明かされた、悟空史上最大の秘策
「人造人間・セル編」で登場したセルは、作中屈指の強敵だった。人造人間を吸収して完全体となったセルは強い者と戦うことを渇望し、世界中のすべての人間の命を懸けた「セルゲーム」を開催する。ここでの悟空の秘策は、彼の戦歴の中でもっとも大胆な賭けだった。
かつてない強敵・セルを前にしても、悟空はどこか余裕のある表情を見せていた。ゲームが始まると自ら一番手に名乗り出て戦闘を始めるのだが、セルの実力を確かめたのち「まいった! 降参だ!」と、あっさり勝負を降りてしまう。そして「おめえの出番だぞ 悟飯!!」と、地球の命運を幼い悟飯に託してしまうのだ。
これを聞いたセルはもちろん、周りにいたZ戦士たちや悟飯本人も驚愕する。しかし、悟空には揺るがぬ確信があった。悟飯の中に眠る“潜在能力”こそが、セルに対抗しうる唯一の力だと。
かつてラディッツ戦やナメック星での戦いで、幾度となく悟飯は極限状態で爆発的な力を発揮してきた。その姿を見てきた悟空は「本気の怒り」をきっかけに、悟飯が覚醒すると読んでいたのだ。
セルゲームの前におこなった「精神と時の部屋」での修行で、変身に怒りを必要とする超サイヤ人を平常心のまま維持できるようにしたのも、この時に備えての布石だったのだろう。
その後、悟飯の真の力を引き出したいと企むセルによって、Z戦士たちは全滅寸前まで追い込まれてしまう。そして16号の頭部が目の前で木端微塵に破壊された時、ついに悟飯の怒りが爆発し覚醒。悟空の期待通り、凄まじいパワーでセルを圧倒する戦士へと進化することとなった。
この秘策は、より強い者を求めるセルがいてからこそ成り立った作戦と言っても過言ではない。それすら読んでいたのだろうか? 悟空の秘策はやはりとんでもない。
■セルの自爆から地球を救う瞬間移動…移動先はまさかの界王星
悟空はセルゲームで、もう一つトンデモ秘策を実行している。それは、セルの自爆から地球を救った“瞬間移動”だ。
覚醒した悟飯がセルを圧倒。もはや完全体でもなくなってしまったセルは、最後の手段として自爆を選ぶ。風船のように体を膨らませ、地球ごと道連れにするという恐怖の選択だ。Z戦士たちは皆、なす術もなく、ただ絶望の時を待つばかりだった。
そんな状況の中、悟空は決断する。「やっぱ どう考えてもこれしか…地球が助かる道は思い浮かばなかった…」「バイバイみんな…」と。
そして悟空はセルごと“瞬間移動”を発動し、なんと界王星に飛ぶのだ。「くっそぉ~~~っ!!!!」とセルが悔しげに叫んだ直後、凄まじい爆発が界王星を包み込む。
巻き添えとなった界王様やバブルスは気の毒だが、悟空の機転と犠牲により、地球は消滅の危機を免れたのであった。
爆発まで1分のカウントダウンの中、自分が死ぬ選択を即座に下し実行に移せるのは、やはり悟空ならでは。この展開のために“瞬間移動”という技が存在したのではないか……そんなふうに思えてしまうほどの究極の一手だった。