
どんな漫画にも最終回はつきものである。そして、作品が愛されていればいるほど、その終わり方が賛否両論を呼ぶこともよくある。
しかし、どんな形であろうとラストに作者の作品に対する思いがしっかりと込められているのは間違いないだろう。強い気持ちが込められているからこそ、それを汲み取っていろいろな意見が出るともいえる。
ある意味「バッドエンド」とも受け取れる終わり方を迎え、読者のあいだでさまざまな反響を呼んだ漫画たち。その衝撃の内容をあらためて振り返ってみよう。
※文中敬称略。本記事には各作品の内容を含みます。
■想い合う2人の最期が切ない『バジリスク〜甲賀忍法帖〜』
原作:山田風太郎、漫画:せがわまさきによる『バジリスク~甲賀忍法帖~』は、かなり衝撃的なラストを迎えた作品である。
伊賀と甲賀という忍法の二大宗家は、「千年の敵」として憎み合う敵同士。服部半蔵に定められた「不戦の約定」によって、かろうじて和平を保っている状態だった。
そんな中、伊賀の頭領の孫娘の朧と、甲賀の頭領の孫である弦之介は恋仲になってしまう。このふたりが結ばれれば、長きに渡る因縁もようやく解けるのではないかと思われていた。
しかし、徳川家康は後継者選びの際、徳川幕府後見人の南光坊天海の提言を受け、伊賀と甲賀の忍法勝負の結果で選定することを決めてしまう。それによって、長きに渡る不戦の約定が解かれるのだった。
こうして朧と弦之介は敵同士となってしまい、ふたりの望まない殺し合いが次々と始まる。そして、最後まで生き残ったのはくしくも朧と弦之介だった。
半蔵の前で最後の果たし合いが始まると、朧は自らの胸を刀で貫いて自害を選択する。弦之介を愛するがゆえに殺すことができない、それならせめて勝ちを譲って生き延びてもらおう……。そんな気持ちが伝わってきた。
しかし、生き残ってしまった弦之介は勝ちを伊賀に譲ると、朧の後を追うように自害してしまう。まるで忍の世界のロミオとジュリエットで、あまりにも悲しすぎる結末に胸が締め付けられた。
ラストに向かうまでに、ふたりには多くの葛藤があった。一族としての責務を果たすか、愛を取るか……。いろんな人間の思いによって身動きが取れなくなっていた。だからこそ、最後にこうした選択をとれたのは、ある意味彼らにとっては幸せだったのかもしれない。
■衝撃の結末にあぜん…『進撃の巨人』
諫山創による『進撃の巨人』のラストは、世界の歴史や人間そのものなど、さまざまなことについて深く考えさせられるものだった。世界の真実を知った主人公エレン・イェーガーは「地鳴らし」、つまり巨人による大量殺戮をする決断をして、世界を終わらせようとする。
その際、仲間であるアルミン・アルレルトやミカサ・アッカーマンたちはエレンを止めるために動き、地鳴らしをどうにか阻止するのに成功した。それでも全人類の8割が亡くなってしまう大惨事となる。
エレンは世界を破壊しつくして、ミカサに首を切り落とされて死ぬというバッドエンドにも見えてしまう結末を迎える。
しかし、この結末の正解というものが見えない部分もある。エレンの決断には差別の歴史や人種間の問題が絡んでいるからだ。自分たちを追いやろうとする人間たちから、故郷を守ろうとしたエレンを一方的に悪だと決めつけるのは難しい。その場だけの怒りで行動したとも思えないし、葛藤した末に死ぬ覚悟や信念を確実に持っていたはずだからだ。それを止めるミカサたちの気持ちもかなり複雑だっただろう。
これは現実でも起こっていることではないか。いろいろな状況に置かれている人間がいて、それぞれの想いが複雑に絡み合っているからこそ、誰が悪かったかを決めるのは難しい。
そういう意味でも、このラストは見る人によって受け取り方が大きく変わってしまうといえるだろう。ミカサがエレンのお墓に語りかけるシーンは、かなり切ない気持ちにさせられた。