水上さんが収録を経て感じた変化とは?

――声優も役者も「言葉」を使って伝えるお仕事だと思いますが、今回の経験を経て「言葉で伝える」という意識に何か変化はありましたか。

水上 僕が役者をするうえで大切にしているのは「体が9割、セリフが1割」くらいのバランスです。だからといって、その1割をぞんざいにしていいわけではなく、その1割は準備の段階でたくさんして、現場でどれだけ9割を作れるかということに重きを置いています。

 なので、セリフのことは事前にあまり考えていなくて、その役がどういったことをしたいのかを第一に考えて、そのための体作りを大事にしているんです。ですが、今回の声優のお仕事はその真逆で、体1割、声9割なんですよ。そこが僕にとっては非常に難しかったですね。

――「体作り」というのは、感情と体を一致させる、といった意味合いなのでしょうか。

水上 そうですね。例えばぞうくんがらいおんくんを引っ張るようなシーンがあった場合、体を使えば腕の筋肉が動いたり、表情に出たりしますが、今回はその行動一つを声に乗せないと伝わらないし、意味がないと思うんです。なので、今回改めて「声優さんってすごいんだな」と思いました。

――難しい分、言葉だけで伝えられることもきっとありますよね。

水上 「言葉で人を動かしていく」という意味で象徴的な職業は、きっとアナウンサーの方なのかなと思います。

 日常的に滑舌を気にして話している人ってあまりいないじゃないですか。例えば役者でも、変に滑舌よく話そうとしすぎる芝居をしても、それはそれで浮いて悪目立ちしてしまって良くないんです。

 でも、ちゃんと相手が聞き取れないと意味がないこともあるので、その塩梅はすごく難しい。だからこそ、僕も言葉に対しての意識は普段からしているほうかもしれません。

 

 

取材・文/根津香菜子

水上恒司(みずかみ・こうし)
1999年生まれ、福岡県出身。『望み』(20)で日本アカデミー賞新人俳優賞、『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』(23)で同賞優秀主演男優賞を受賞。主な出演作は、「中学聖日記」(18)、『弥生、三月-君を愛した30年-』(20)、「MIU404」(20)、NHK大河ドラマ青天を衝け」(21)、『そして、バトンは渡された』(21)、『死刑にいたる病』(22)、『OUT』(23)、NHK連続テレビ小説「ブギウギ」(23)、『熱のあとに』(24)、「ブルーモーメント」(24)、『八犬伝』(24)、『本心』(24)など。ボイスキャストは本作が初出演。

©ギンビス ©劇場版「たべっ子どうぶつ」製作委員会

《作品概要》
『たべっ子どうぶつ THE MOVIE』
5月1日(木)全国公開
監督:竹清仁
脚本:池田テツヒロ
松⽥元太、⽔上恒司、髙⽯あかり、藤森慎吾蒼井翔太、⼩澤亜李、⽔瀬いのり、東⼭奈央、⽴⽊⽂彦、間宮くるみら声の出演。
配給:クロックワークス・TBSテレビ / アニメーション制作:マーザ・アニメーションプラネット
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