■実は昔、将来を誓い合った恋人がいた

 車掌は男性という設定ではあるが、ボディは透明だし、昔は人間だったのかもよく分からない。そのため一般的な男性のイメージとは離れているが、実は昔、将来を誓い合った恋人もいた。そのことが描かれているのが「フィメールとの思い出」のエピソードだ。

 ある日、車掌はフィメールという女性客を機嫌良くもてなしていた。しかし彼女は横柄な態度を取り続け、999号をわざと脱線させたことが発覚する。その後、鉄郎とメーテルに暴力をふるったフィメールに対し、車掌は態度を一変して列車から放り出すと警告。

 その後「思い出の顔」駅で降りたフィメールは仮面を外し、美しい姿で現れて車掌に詰め寄る。なんと彼女は車掌のかつての恋人であった。夢や希望を失った車掌を責め、彼女は去っていくのであった。

 “私は青春をすべてあの人に捧げました…そのことを私は後悔していません。思い出はいつまでもこの胸にあります…”と、つぶやく車掌の後ろ姿はなんとも切ない。

 恋人がいたということは、車掌は昔は人間だったのかもしれない。なぜフィメールと別れることになり、なぜ銀河鉄道の乗務員として働くようになったのか、その背景は一切語られていない。

 このエピソードは、車掌を一気に謎めいた存在へと押し上げた印象的な回であった。車掌の無表情なマスクの奥には何が秘められているのか……未だ謎のままだからこそ、興味は尽きない。

 

 『銀河鉄道999』のメインキャラといえば鉄郎とメーテルだが、振り返ってみると車掌も忘れてはいけない存在だ。謎めいた体と過去を持ち、まじめな乗務員かと思いきや、ときには業務違反をしてまで2人を助ける姿はカッコいい。

 『銀河鉄道999』が大ヒットした理由も、この謎多き人物である車掌の行動や存在があってのことだろう。未だ松本さんが現役で作品を手掛けていたら、ぜひとも車掌のスピンオフ作品を見てみたいものだ。

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