■魔族最強の戦士と渡り合う男! 戦士「アイゼン」

 勇者パーティーの近接戦闘担当、戦士・アイゼンはドワーフらしい怪力と防御力の持ち主だ。こう書くと簡素だが、実態を見ると彼も傑物だとわかる。

 まず自慢の怪力だが、原作第97話でアイゼンは「俺はダイヤモンドを握り潰せる」と豪語している。防御力もずば抜けており、原作第111話で4本の槍で同時に攻撃された際は、槍のほうがすべて砕け散っていた。何もなかったかのように戦いを続行するアイゼンの姿に、ヒンメルも「化け物みたいな頑丈さだ」と賞賛した。

 この重戦車のような肉体に、戦士としての技量が上乗せされるのだ。弟子のシュタルクが単独でドラゴンを倒せたのも納得できる。

 そんなアイゼンの強さが存分に発揮されたのが、第117、118話での大魔族・リヴァーレとの激闘だ。“魔族最強の戦士”と呼ばれる男をアイゼンは単独で足止めし、最後は崖から突き落として痛み分けに持ち込んでいる。パーティーのピンチを水際で食い止める、前衛の鏡のような働きぶりだ。

 それにしても、アイゼンの背後にヒンメルの剣やフリーレンの魔法が控えていると思うと絶望感がすごい。なんとバランスのとれたパーティーだったのだろう。

■無補給無酸素で2か月活動できる魔法とは…? 僧侶「ハイター」

 お酒が大好きな生臭坊主、僧侶・ハイターは原作第22話で衝撃的な発言をしている。TVアニメで当該エピソードが放送された時も、「もしかしてハイターってめちゃくちゃすごいんじゃない?」と視聴者を騒然とさせたキャラだ。

 その発言とは、フリーレンと初めて出会った際にハイターが言った「(フリーレンの魔力量は)私の5分の1くらいですね」というセリフだ。この時、フリーレンは自分の魔力を10分の1以下に抑えていたため、実際はフリーレンが上なわけだが、冷静に考えるとハイターもかなりすごい事実に気づく。

 フリーレンはハイターと出会った時点で1000年近く魔法の修行をしていた。つまり10分の1は100年分となり、ハイターはその5倍……つまり、魔法使いが500年修行して会得する魔力を持っている計算だ。ちなみに当時のハイターは若干10代。実際の魔力量が若干少なかったとしても、疑いようのない大天才である。

 さらにハイターは原作第97話で“無補給無酸素状態で生存できる魔法”を披露し、「二か月は保つでしょう」と発言。魔力量だけでなく使える魔法も規格外であることが判明した。デタラメにもほどがある魔法をかけられたフリーレンは、こんな言葉を漏らしている。

 「ここには化け物しかいないのか…」と。

 思わずうなずいてしまった読者は数知れない。

 

 おもに「フリーレンの回想」という形で少しずつしか明かされない勇者パーティーの実力だが、わずかな描写だけでとんでもなく強かったのが読み取れる。しかも本編の時系列では南の勇者や“腐敗の堅老”クヴァールなど、ヒンメルたちの上をいく実力者もゴロゴロいたのだからすさまじい。

 そんな彼らの強さも長い時が過ぎれば次第に忘れられていき、偉大な伝説だけが残る。ほんの少し寂しい気もするが、それこそ「後日談ファンタジー」こと『葬送のフリーレン』の面白さなのだろう。

  1. 1
  2. 2
  3. 3