■ボクシングを始めた動機「強いってどんな気持ちなの?」主人公・一歩と同じ原点

 一歩を苦しめた天才野生児・ウォーリーとのタイトルマッチで、リカルドはかつてない接戦に持ち込まれる。求めていた熱狂に包まれた試合終盤、リカルドは自分の力を知りたい一心でウォーリーと真っ向勝負の打ち合いに挑む。

 あえて危険な殴り合いを望むリカルドに、セコンドのビルは遠い昔の出来事を思い出す。彼が思い浮かべたのは、ボクシンググローブを抱きしめるリカルドと思われる少年と、その少年が口にした言葉だ。

 「強いってどんな気持ちなの?」

 『はじめの一歩』ファンならおわかりだろう。なんと、本作の主人公・一歩がボクシングを始めるときに語ったセリフと同じなのだ。

 一歩は第1話で鷹村と出会い、ボクシングの世界を知る。いじめられっ子で情けない自分も鷹村のように強くなりたいと願い、「強いって……一体どんな気持ちですか?」と涙ながらに訴えた。それ以降、「強いとは何か」は一歩だけでなく『はじめの一歩』そのものを貫くテーマになっている。

 一歩とリカルドの意外すぎる共通点に、読者は当時騒然としたものだ。リカルドほど強くなっても「強いとは何か」はわからない。いつか彼が、その答えにたどり着く日は来るのだろうか?

 

 この記事で分析してきたリカルドの内面は、『週刊少年マガジン』に第1312話が掲載された2020年9月頃から徐々に判明したものだ。完璧すぎるチャンピオンが見せた人間らしい一面に「リカルドが好きになった」という声も多い。

 自分の力を証明し、強いとはどんな気持ちかを求め続けるリカルド。彼の望みを叶えるのは誰だろうか? その誰かとリカルドの試合は『はじめの一歩』の歴史に残るベストバウトになるに違いない。

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