
国民的アニメ『名探偵コナン』の劇場版シリーズでは、毎年豪華なゲスト声優陣の参加が話題となる。
最新作『名探偵コナン 隻眼の残像』では、山田孝之さんが山中の炭焼き小屋を営む男性・大友隆役に、声優初挑戦の山下美月さんが天文台の研究員・円井まどか役に抜擢され、注目を集めている。
実はこれまでも、劇場版『名探偵コナン』には、数々の実力派女優たちがゲスト声優として参加し、記憶に残る重要キャラを演じてきた。そのなかでも、物語に大きな衝撃を与えた「とんでもない役どころ」に挑んだ女優たちの名演を振り返っていこうと思う。
※本記事には各作品の内容を含みます
■シリーズ初の「黒ずくめの組織」ゲスト声優!『名探偵コナン 純黒の悪夢』天海祐希
劇場版第20作目『名探偵コナン 純黒の悪夢』(2016年)は、シリーズで初めてゲスト声優が「黒ずくめの組織」の一員を演じた作品として、大きな話題を呼んだ。その大役に抜擢されたのが、天海祐希さんだ。
彼女が声を担当したのは、本作のキーパーソンとなる女性構成員・キュラソー。銀色のロングヘアをオールバックにまとめ、左右で色の異なるオッドアイの瞳を持つというビジュアルだけでも強烈なインパクトを放っていた。
物語冒頭では、警察庁に単身で侵入し機密データを強奪。さらに、安室透や赤井秀一と命がけのカーチェイスを繰り広げるなど、圧倒的な存在感を放つ。一方、事故の衝撃で記憶を失ったあとは、コナンや少年探偵団と交流を深める中で、優しく、時に頼りない一面を見せる。
大胆不敵な本来の姿と、記憶喪失による不安げで無垢な表情。相反するふたつの人格を、天海さんは見事に演じ分けていた。
記憶を取り戻したあとは再び「黒ずくめの組織」の冷徹な顔に戻るキュラソーだが、クライマックスではかつて心を通わせた子どもたちを守るため、支柱から離れ転がる大観覧車に向かって「止まれーー!」と叫びながら、クレーン車ごと突っ込んでいく。キュラソーが自らの命を顧みず行動したこのシーンは、まさに本作屈指の名シーンであり、多くの観客の胸を打った。
天海さんは『名探偵コナン』のテレビアニメが始まった1996年から、ドラマや映画に本格的に出演し始めている。「同級生のようなコナン君と共演できるなんて本当に光栄です」と、当時のインタビューで語っていたのも印象的だった。
■クールな美人自衛官の正体は…『名探偵コナン 絶海の探偵』柴咲コウ
劇場版第17作目『名探偵コナン 絶海の探偵』(2013年)は、コナン映画では異色とも言える本格スパイ・サスペンスだった。
舞台は日本が誇る最新鋭のイージス護衛艦「ほたか」。そこに偶然乗艦することになったコナンたちが、国家機密を巡る陰謀と極秘任務に巻き込まれていく。
本作でキーパーソンとなる女性自衛官・藤井七海の声を担当したのは、コナンファンを公言する柴咲コウさん。彼女が演じる藤井は、イージス艦「ほたか」に唯一乗艦している女性で、凛とした佇まいとクールな物腰、そして毛利小五郎もメロメロになってしまう美貌を兼ね備えていた。
しかし、その正体は防衛大臣直轄の特殊部隊、陸海空自衛隊の統合防諜組織「自衛隊情報保全隊」の一員だった。彼女は艦内で起きた情報漏洩事件を調査し、某国のスパイ「X(エックス)」を追っていたのだ。
作中では、子どもらしからぬコナンの行動に疑念を抱き「さっきはお手柄だったわね あなたいったい何者?」と、冷静かつ鋭い洞察力を見せたりもしている。
柴咲さんの落ち着いた低音ボイスは、知性と強さを併せ持つ藤井というキャラクターに絶妙にマッチし、作品全体の緊迫感を一段と引き立てた。また、彼女は翌年公開の『異次元の狙撃手』にて主題歌も担当しており、2年連続で本作の劇場版に深くかかわっている。