■一般生徒を演じてもオーラは隠しきれない!? 『生徒諸君!』小泉今日子
1984年に公開された『生徒諸君!』は、当時『週刊少女フレンド』(講談社)に連載されていた庄司陽子さん原作の同名漫画を実写映画化した作品だ。
複雑な家庭環境で育ちつつも、明るく前向きに生きる少女・北城尚子ことナッキーの学園生活を描いた本作。
主人公のナッキーを演じたのは、当時アイドルとして絶大な人気を誇っていた小泉今日子さんだ。原作漫画でナッキーはショートヘアの明るい女の子なのだが、小泉さんも同じくショートヘア。笑顔がとてもキュートで、実写化においても全く違和感がなかった。
作中、小泉さんはジャージ姿でキャップ帽をかぶり、ソフトボールの練習をするシーンがある。地味な恰好ではあるし、他生徒にも囲まれているので通常であれば目立つことはないだろう。だが小泉さんはそんな姿でもオーラが際立っており、多くの生徒役の中でも存在感がハンパなかった。
本作で小泉さんはナッキーだけでなく、病弱な双子の姉・マール役も務めており、異なる雰囲気のキャラクターを一人二役で演じたことが話題となった。また作品自体もただの明るい青春映画ではなく、家族の絆や在り方に踏み込んだ見応えのある仕上がりとなっている。
この作品で映画初主演を務めた小泉さんの演技は高く評価された。それ以降アイドルの枠を超え、女優としても多くのドラマや映画で活躍しているのは、みなさんもご存じの通りである。
■昭和あるあるの恋愛展開がたっぷり楽しめる『アイドルを探せ』菊池桃子
『mimi』(講談社)で1984〜1987年に連載された吉田まゆみさん原作の『アイドルを探せ』は、1987年に実写化映画が公開されている。
主役の女子大生・藤谷知香子を演じたのは、名曲『卒業-GRADUATION-』で人気を博した菊池桃子さんだ。
『アイドルを探せ』のあらすじは、高校を卒業したばかりの知香子が、一人でグアム旅行へ行くことから始まる。常に素敵な彼氏が欲しいと願う知香子。旅行先では偶然、中学時代に憧れていた永江(池田正典さん)や、その先輩の岩田(竹本孝之さん)などと出会い、女友達にも恵まれる。そして、帰国後も彼らとの交流は続き、知香子は大人びた2人の男性との間で揺れ動くのであった。
本作で菊池さんは、うるんだ瞳で彼を見つめたり、口紅をつけては思い直したように拭き取ったりするなど、昭和ならではのアイドルらしい演技を見せている。うるうるの瞳の清純派アイドルの演技に、当時メロメロになった男性は多かっただろう。
ちなみに本作のキャッチコピーは「ちょっと背伸びして、“恋”したい」。作中では知香子が当時流行っていたプールバーでビリヤードを楽しんだり、雨の中、傘もささず濡れながら知香子と永江が別れ話をするなど、“昭和の恋愛あるあるシーン”もたっぷり含まれており、今見返してみても見どころ満載だ。
80年代のアイドルは、当時のファンにとって神秘的な存在だった。「アイドル黄金期」と呼ばれた彼女たちに、映画を通して少しでも近づきたいと思った人もいただろう。
ちなみに令和の今は、少女漫画の実写化作品で女性アイドルがヒロインを演じることが少なくなっている印象だ。その代わり、ヒロインの相手役となるプリンス役を、男性アイドルが演じていることが多い。
そう考えると、形は変わっても映画とアイドルの関係は続いていると言えそうだ。