■『私屋カヲル』版では大人になっても変わらないしんちゃんの姿が

 少女漫画誌から青年漫画誌に場を移して活躍中の私屋カヲル氏の作品『オラ35歳になったゾ!!事案発生でおロープちょうだい?』は、日常の中で突如しんちゃんが35歳になるドタバタコメディだ。

 あるとき、昼メロのラブシーンを見てニヤニヤしていたしんちゃんは、みさえに子どもが見るものではないとげんこつを食らい怒り心頭。「オラコドモやめるぞゾ!!」と宣言すると、みさえが買い物で出かけているうちに、本当にヒゲの生えた大人になってしまう。

 その後、中年男が園児に声かけという注意メールを見たみさえはしんちゃんを心配し、会計をほっぽり出して彼の元へと走り出す。

 一方のしんちゃんは、ネネちゃんにしんのすけだと信じてもらえないうえに加齢臭とまで言われ、自分である証拠に「ケツだけ星人」を披露しているところを警察につかまってしまう。しかし、しんちゃんは手錠に「もっときつく〜」と興奮し、ぞうさんを披露しようと服を脱ぎだす始末。

 そこに駆けつけたみさえが再びげんこつを食らわせると、シュルシュルと元の姿に戻るのだった。なぜ自分だとわかったのかと問うしんちゃんに、みさえは「あたしは母親よ」と答える。駆け足でドタバタコメディが進み、“母の愛は強い”という綺麗なオチで終わった同作。野原家の絆は大人になっても変わらないだろう。

  他にも、扉絵で『かりあげクン』の作者・植田まさし氏が「35歳?のしんちゃん」と「69歳?のかりあげ正太」のコラボイラストを発表している。「君もそんな感じ?」とやや年老いた正太に問いかけられるしんちゃんは、5歳の頃と変わらない外見のままポツポツと髭が生えたサラリーマン風。「確かにこんな感じになりそう」と感じさせる妙なリアルさが面白い。

 漫画家たちが描いた『クレヨンしんちゃん』トリビュート漫画の数々は、現在でも『Webアクション』で読むことができる。あらためて見てみると、どの漫画家も総じて“大人になっても変わらないしんちゃん”を描いている。いくつになっても、ちょっぴりおバカで優しいしんちゃんのままでいてほしいものだ。

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