■風間くんがエリートコースを進んでいる『笑平』版

 続いては、『青少年アシベ』の笑平氏の描く『永遠のお子様』。“クレしんワールド”とは違う別次元の物語だ。

 同作の主人公でもあるパラレルワールドの風間くんは、東大を卒業し社会人として活躍中。しかし、進退が決まる大事な会議を控えており、失敗したら左遷という危機的状況にいた。

 あまりのプレッシャーに追い詰められる風間くん。そこにしんちゃんから電話がかかってくる。どうやらしんちゃんは、「モロダシ共和国」のオマタさんの家にホームステイしている様子。 

 雑談をしている余裕のない風間くんは「飛ばされるかどうかの瀬戸際なんだよ」と切ろうとする。するとしんちゃんは、そんな風間くんの気持ちを察してか「ヒマになったらモロダシ共和国にくれば?」と声をかけるのだった。

 その瞬間、風間くんの脳裏に子どもの頃、雨の中しんちゃんが助けてくれたシーンがよみがえる。帰る場所があるという安心感はパニック寸前の心を落ち着け、風間くんは大事な会議に乗り出した。

 だが、一か月後、しんちゃんの前にはヒマになった風間くんの姿があるのだった。オチにクスッと笑ってしまうが、しんちゃんの優しさ、風間くんとの変わらない友情にグッとくる、ほっこり短編だ。

■酢乙女あいが爆美女に成長した『カワハラ恋』版

 恋愛漫画を多く手掛けるカワハラ恋氏の作品では、高校生になったあいとしんちゃんが登場している。高校生になったあいちゃんは黒髪ロングの美人で、清楚な雰囲気も増している。こんな女子がいたら学校内でモテモテだろうが、彼女の心には相変わらずしんちゃんがいるようだ。

 一方のしんちゃんは、身長も見た目もほぼ5歳の頃から変わっていない。制服をきてはいるが、あいちゃんと並ぶと兄弟のようである。

 一途なあいちゃんは下校時にしんちゃんを待ち伏せし、一緒に帰ろうと誘う。しかし、しんちゃんは「高校生になってもしつこいゾ」とあきれ顔。この言葉から、小中学校の頃からずっと追いかけている様子が伺える。

 だが、あいちゃんは「しんサマへの気持ちは変わりません」と笑顔を見せる。かつて人から「いつまでも変わらないな。大人になれよ」と批判されたことがあるしんちゃんは、変わらないあいちゃんを受け入れたような表情を見せ、「あいちゃんは変わらなすぎるゾ」と言いつつ一緒に帰るのだった。

 あいちゃんの恋が成就するかはわからないが、変わらない想いを貫く姿は健気である。幼い頃から変わらないしんちゃんとの対比も良い恋愛物語だ。

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