■「敗北と勘違い」早とちりで離席したが……!?

 前述したウメハラ氏やどぐら氏の例は、それなりに過去の話だが、つい最近打ち立てられたばかりの「伝説」もある。それが2024年にサウジアラビアで開催された「Esports World Cup2024(EWC2024)」で起こったハプニングだ。

 日本が誇るプロゲーマーの立川氏は、この『ストリートファイター6』の世界大会でアメリカのプロゲーマー・ネヒュー氏と対戦。3試合先取の試合形式で、お互いに2本ずつ勝利をおさめ、いよいよ最終戦である3試合目を迎える。その3試合目の1ラウンドはネヒュー氏が勝利。2ラウンド勝利で勝者が決まるため、立川氏は追い詰められるかたちとなった。

 運命の2ラウンド目の終盤、立川氏は相手の突進にあわせてSA3(超必殺技)を放つが、ネヒュー氏もカウンターのSA3を繰り出した。基本的に後出ししたほうの技がヒットするため、立川氏は敗北を確信して席を立ってしまう。

 しかし、実際ヒットしたのは立川氏が操るエドのSA3。これで相手の体力を削りきり、2ラウンド目は立川氏の勝利となった。

 席を立った立川氏はそれに気づかずステージを降りかけ、3ラウンド目が始まる直前に慌てて再度着席。ヘッドセットを装着する余裕もないまま、試合が行われる。

 そんな状態にもかかわらず、立川氏は奇跡的に3ラウンド目も取り、勝利。本試合は幕を閉じた。

 SA3の演出と立川氏の動きで、その試合をオンラインで観ていた筆者も「立川氏が負けた」と勘違いした。試合中に席を立ち、結果勝利するという前代未聞のハプニングは「席立ち川事件」として本人も顛末を語っており、大きな反響を呼んだ。

 なお、立川氏の同大会の最終結果は3位であり、世界の大舞台で十分すぎるほどの好成績をおさめている。


 格闘ゲームの歴史は古く、今回紹介した以外にもさまざまな名場面や珍事件が語り継がれている。最近の『スト6』ブームをきっかけに格闘ゲームの魅力にとりつかれた筆者のようなファンも多いはずで、長年格闘ゲームを盛り上げてきたプロゲーマーたちのすごさや、個性あふれるキャラクターに圧倒されるばかりだ。

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