
2023年に発売された『ストリートファイター6』(カプコン)は、「Nintendo Switch2」版の発売も決定。いまだ盛り上がりは続いており、オンライン、オフラインを問わず、いたるところで大会が開催されている。
本作に限らず、人気配信者が中心となる格闘ゲーム大会は視聴していておもしろい。だがその中でも、やはり実際にプロゲーマーが出場する大会の雰囲気は一味違う。
そこで今回は、過去に開催された格闘ゲーム大会において、伝説として語り継がれている名シーンを振り返ってみたい。
■日本が誇るレジェンドが若かりし頃に魅せた「伝説の逆転劇」
格闘ゲーム界の名場面としてもっとも有名なのが、プロゲーマーの梅原大吾(ウメハラ)氏が世界規模の大会で魅せた、通称「背水の逆転劇」と呼ばれるシーンではないだろうか。
それは、2004年にアメリカのカリフォルニア州で開催された格闘ゲーム大会「EVO2004」の『ストリートファイターIII 3rd STRIKE』(カプコン)の準決勝で起こった。
日本を代表するトッププレイヤーのウメハラ氏は、トーナメント準決勝でアメリカを代表する強豪ジャスティン・ウォン氏と対戦。
当時最強と呼ばれた日本人プレイヤーを倒し、勢いに乗るジャスティン氏の操る「春麗」は、ウメハラ氏の「ケン」を圧倒。体力ゲージが残り1ドットというところまで追い詰める。
そこでジャスティン氏は、相手がガードするだけでも体力ゲージを削れる超必殺技(スーパーアーツII)「鳳翼扇」を繰り出す。防御していようが攻撃がヒットすればウメハラ氏の敗北が決まるという、まさに絶望的な状況だった。
するとウメハラ氏はジャスティン氏の攻撃を避けずに、「ブロッキング」という防御手段を選択。ブロッキングなら体力を減らすことなく相手の攻撃を防げるが、非常にシビアな操作が求められる高度な技術である。
相手の攻撃がヒットする0.17秒以内にレバーを入力する必要があり、その難易度の高さは言うまでもない。それにジャスティン氏のほうも、ウメハラ氏がブロッキングを狙っていることを想定しており、フェイントをかけてから出した「鳳翼扇」だった。
しかしウメハラ氏は、春麗の「鳳翼扇」による多段攻撃に対し、15回連続でブロッキング成功。その春麗の攻撃をノーダメージで防ぎきると、カウンターで12連続の強烈なコンボ攻撃を叩き込み、最後は逆にケンのスーパーアーツIII「疾風迅雷脚」を繰り出して大逆転勝利をおさめたのである。
ウメハラ氏がブロッキングに成功するたびに客席からは大きな歓声があがり、会場は大盛りあがり。この試合は、日本のみならず世界の格闘ゲームファンにとっても伝説となった。
筆者は『ストリートファイター6』をかじっただけの格ゲー初心者だが、このときの「ウメハラvsジャスティン」の対戦動画を観るたびに、胸にアツいものがこみ上げてくる。
■誰も予想できなかった衝撃の「0回戦敗退」
熱い試合とは別の意味で格闘ゲーム界において語り草となっているのが、プロゲーマーのどぐら氏による「0回戦敗退」。これは2015年に開催された『GUILTY GEAR Xrd ーSIGNー』(セガ)の大会で起こった出来事だ。
オンライン大会ということで生放送を行っていたどぐら氏は、予選会場にアクセスできないトラブルに見舞われていた。運営と連絡を取りながら、いろいろ試すも原因不明。
しかし原因を探っているうちに、同イベントの公式サイトに「PS4」の文字を発見。実はどぐら氏は、PS4版の大会にPS3で参加しようとしており、それが原因でオンラインの予選会場にアクセスできなかったのだ。
PS4やPS4対応のコントローラーは持っていたがセッティングしておらず、どぐら氏は「ほかの参加者にこれ以上迷惑をかけるわけにはいかない」と出場を辞退。大会に参加すらできない無念の「0回戦敗退」となった。
実は規模の大きなゲーム大会では、交通機関のトラブルなどで参戦できなくなる「0回戦敗退」となった事例は過去にもある。だが、ゲーム機を間違えての0回戦敗退は前代未聞。その一部始終が生放送されていたこともあって、どぐら氏の伝説として(おもしろおかしく)ファンのあいだで語り継がれることとなった。
ちなみにこの一件のあと、どぐら氏は自身のXにて、大会に出場するプロゲーマーたちに向けて参加準備ができているかの注意喚起を行う投稿をしている。