「これはジム? それともザク?」見た目での判断は超困難…『ガンダム』好きも迷う「どっちつかずのMS」たちの画像
ザクのボディをベースにジムっぽい頭部がつけられた「ザニー」 『機動戦士ガンダム サンダーボルト(18)』(小学館)

 ガンダムシリーズに登場するモビルスーツ(MS)の中には、開発経緯やその見た目などから、どの機体に分類すればいいのか判断しにくい機体が存在する。

 たとえばアニメ劇中で「ガンダムもどき」と呼ばれていた「リ・ガズィ」の正式名称は「リファイン・ガンダム・ゼータ」。そこだけ見るとガンダムに該当しそうだが、実際のところはっきりしない。

 さらにアニメ本編に登場しない機体をまとめた「MSV(モビルスーツバリエーション)」も存在し、そこには各機体の改修機やプロトタイプ機など、数多くのMSの設定がある。

 今回はそういった機体のなかでも、有名機体の開発過程で生まれた、「これはどっちなんだ?」と困惑させられる、2体のMSの特徴をあわせ持った不思議な機体たちを紹介したい。

■さすがに「グフ」要素が薄すぎない?

 テレビアニメ『機動戦士ガンダム』の本編に登場したジオン公国軍のMS「グフ」と「ドム」は有名だが、その間に「グフ試作実験機」というMSが存在することをご存知だろうか。

 『週刊ガンダムモビルスーツバイブル 69号』(デアゴスティーニ・ジャパン)によると、「グフ」→「グフ試作実験機」→「プロトタイプドム」→「ドム」の順に開発されていったという。

 グフはザクなどを開発した「ジオニック社」製で、ドムは「ツィマッド社」製のMS。だが、ツィマッド社はグフのライセンス生産を請け負っていた。

 そこでグフをベースに、ツィマッド社が得意とする強力な脚部スラスターなどのパーツを取りつけて開発されたのが、グフ試作実験機である。

 ボディはほぼグフだが、頭部や脚部にはドムの特徴が見られ、背中のヒートサーベルはこの時点の仕様のままドムに採用されている。ドムならではの独特の頭部を見たら、どうしてもグフとは思えないのだが、正式名はグフ試作実験機なのだ。

 ちなみにグフ試作実験機はデータ収集のため1機のみが開発され、そのデータはドムの試作型である「プロトタイプドム」の開発に活かされたという。グフ試作実験機という存在は、まさに「グフ」と「ドム」をつないだ、幻の機体と言っても過言ではない。

■名前と見た目が一致しない代表格?

 アニメ本編に登場した「ザク」と「ゲルググ」の間に、「高機動型ザク(ゲルググ先行試作型)」という試作機が存在した。その名称から、すでにどっちつかず感がにじみ出ているが、資料によって呼び名はバラバラ。なかには「ゲルググ先行試作型(ザクIII)」とするものもあるが、ネオ・ジオンのザクIIIとは完全に別物である。

 その外見はザクともゲルググとも判断しづらく、一見しただけではどちらの機体かさっぱり分からない。同機専用の小型ビームライフルを装備し、近接武器としてヒート・サーベルを持っている。

 開発経緯は、ジオン軍の次期主力MSコンペで「リック・ドム」に敗北した「高機動型ザクII」をベースに、すでに別途開発中の「ゲルググ」のパーツを流用して開発された機体とのこと。

 結局ゲルググに、この高機動型ザク(ゲルググ先行試作型)の設計は引き継がれることはなく、完全に新設計で開発された。

 なお『総解説ガンダム辞典』(講談社)には、このゲルググ先行試作型は一年戦争後に博物館に寄贈されたとの記述もある。

 ゲルググ先行試作型は日の目をみることはなかったが、本家ゲルググ自体も開発の遅れで、性能通りの活躍ができたわけではない。いち早くゲルググ先行試作型が正式採用されていれば、宇宙での戦いは違った展開になっていた……かもしれない。

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