『機動戦士ガンダム』を代表する“頭脳”…もっとも優秀だった「技術者&博士」は誰なのかの画像
ブルーレイ『劇場版 機動戦士ガンダム シネマ・コンサート』(バンダイナムコフィルムワークス) (C)創通・サンライズ

 ミノフスキー粒子やサイコ・フレーム、はたまた強化人間の存在など、SF作品でもある『機動戦士ガンダム』シリーズには現実離れした、さまざまな技術があふれている。

 そういった技術や生み出された兵器は誰がどういった経緯で作り出したのかなど、しっかりとした設定が用意されているのも特徴。そのあたりが作品のリアリティを構築し、物語に深みを与えている。

 とくに重要な発見や高度な技術を生み出した研究者や技術者の存在は、作品のことをよく知るうえでも興味深い部分。一年戦争時を代表する“頭脳”ともいえる、代表的な人物たちを振り返ってみたい。

※本記事は作品の内容を含みます。

■モビルスーツ「ガンダム」の設計者

 『ガンダム』シリーズの技術者を語るうえで、まず真っ先に思い浮かぶのが、実際に「ガンダム」の設計に携わったエンジニアの「テム・レイ」だろう。『機動戦士ガンダム』の主人公、アムロ・レイの父親でもあり、ガンダムの設計やガンキャノンの開発に深くかかわった優秀な技術士官である。

 テム・レイの階級は大尉だが、ホワイトベースの初代艦長であるパオロ中佐が敬語で話す場面もみられ、上官からも敬意をもって接されているのが分かる。それだけ優秀な人物であり、連邦が進める「V作戦」におけるキーパーソンだったのは間違いない。

 ジオンのザクIIがサイド7を襲った際、テム・レイは民間人の避難よりもガンダムの搬出を優先する姿勢をみせた。そのせいで人命よりも仕事を優先する、冷酷な人物と感じた人もいるかもしれない。

 しかしテム・レイは、息子のアムロと同じくらいの子どもたちが戦争に駆り出される現状を憂いた発言もしており、ガンダムが量産されることで戦争が早期に終わると信じていた。

 優秀で仕事熱心なのはもちろんだが、その内面は戦争を早く終わらせたいと願う心優しい技術者だったといえるだろう。

 それだけにサイド7が襲撃された際に宇宙空間に投げ出され、酸素欠乏症を患ってしまったのが惜しまれる。

■マグネットコーティング理論を完成させた天才

 モビルスーツの関節部などに磁気コーティングを施すことで、機体の可動速度を向上させる新技術が「マグネットコーティング」だ。

 ニュータイプとして覚醒したアムロ・レイの超人的な反応速度にガンダムの性能が追いつかなくなった際に、マグネットコーティングによるパワーアップが採用された。このマグネットコーティング理論を構築したのが、連邦に属する「モスク・ハン」博士である。

 ブライト・ノアは、博士のことを「電磁工学の新鋭」とアムロに紹介。ガンダムの動きを速くする新技術については「ま、油をさすみたいなもんだな」と説明していた。

 だが実際にこのマグネットコーティングはすさまじい効力を発揮した。ガンダムの反応速度はアムロも驚くほど向上し、戦争終盤のアムロ&ガンダムの圧倒的な強さを支えることとなる。ガンダムの開発者に比べるとモスク・ハンの存在は地味に見えるかもしれないが、アムロとガンダムにもたらした恩恵は非常に大きく、相当優秀な技術者である。

 最初はモスク・ハン博士の胡散臭い理論に訝しげな表情を浮かべていたアムロだが、彼と接するうちに意気投合。「博士は僕らの救い主です」と語るアムロに、モスク・ハンは「キミが生き残ったらそう言ってくれ」と返答する。

 さらに「(ガンダムが撃墜されたとしても)今回のデータだけは何らかの方法で私の手元に届けてほしいものだな」と技術者らしい身も蓋もない発言をすると、アムロは「だから人の本音というのは聞きたくありませんね」と、どこかうれしそうな表情を浮かべて返し、ふたりは固い握手を交わしている。

 アムロと博士のほんの短いやりとりではあるが、もともと職人気質のアムロとの相性の良さが感じられたシーンだ。このときモスク・ハンが好きになった視聴者もいるのではないだろうか。

 ちなみにモスク・ハン博士の「マグネットコーティング」は、機体の反応速度を上げるだけでなく、のちの可変モビルスーツ分野の発展にも多大な影響を与えた素晴らしい技術である。

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