■ルフィに「殺されるぞ」とまで言わしめた最強の祖父

 どんな敵が相手でも果敢に向かっていくルフィだが、対峙しただけで戦意喪失してしまうこともあった。それが描かれたのが、海軍本部所属の中将であり、ルフィの実の祖父であるモンキー・D・ガープとのエピソードだ。

 「ウォーターセブン編」で、世界政府の諜報機関「CP9」との激闘に勝利をおさめた麦わらの一味だったが、海賊船ゴーイング・メリー号を失ってしまったことで、今後の方針を決めかねていた。

 すると、ルフィたちが静養するウォーターセブンに海軍の軍艦が突如入港し、ガープ中将率いる大量の海兵が一味のもとへと向かってくるのである。

 静養先である造船会社・ガレーラカンパニーの壁を派手に壊し一味を騒然とさせたガープは、部屋の奥で眠るルフィを見つけると「起きんかァ~!!! ルフィ!!!」と、強烈なげんこつをお見舞いするのだ。

 ゴム人間であるルフィには本来打撃など通用しないのだが、その一撃で目を覚まして涙を浮かべるルフィ。ガープがルフィの祖父であることが明らかとなり衝撃が走る仲間たちに対し、「絶対に手ェだすなよ!!! 殺されるぞ……!!!」と、ガープには絶対に抵抗しないことを厳命するのである。

 その後のガープと口論するシーンでもルフィは、殴られそうになると即座に「ギャーごめんなさいっ!!!」と降伏し、ガープには勝てないということを明確に示したのである。

 ガープに対してはもはや“恐れ”に近い感情を見せたルフィ。このシーンがあったからこそ、のちの「マリンフォード頂上戦争編」において両者が拳を交えるシーンにも、より重みが出るのだった。

 

 さまざまな敵と戦うなかで、実力差によって打ち倒されることはあれど、ルフィ自身が戦意や抵抗の意思を失うことは非常に珍しい。とはいえ、こうしたルフィ自体が絶対的な存在ではないという描写があるからこそ、我々読者もその成長を実感できるというものだ。

 世界の歴史が徐々に紐解かれ、戦いも激化の一途を辿るなかでさらなる絶望がルフィを襲うかもしれないが、数々の困難を乗り越えた先で「海賊王」になるその日まで、ルフィの冒険をこれからも見守り続けたい。

  1. 1
  2. 2
  3. 3