
みなさんは子どものころ、家の近くに自然豊かな遊び場はあっただろうか。藤子・F・不二雄さんの『ドラえもん』には、「裏山」という自然豊かなエリアがたびたび登場する。
裏山はのび太ら子どもたちの遊び場でもあるし、『映画ドラえもん のび太と緑の巨人伝』にも登場するキャラクター「キー坊」の生まれ故郷でもあり、物語にはなくてはならない場所だ。
しかし裏山をメインにしたエピソードには、ちょっとゾッとしてしまう話も多くある。思わず手に汗握ってしまう裏山での怖すぎるエピソードを見てみよう。
※本記事には各作品の内容を含みます
■自然豊かな裏山がまさかのホラーの舞台に…「ゴルゴンの首」
数ある『ドラえもん』のエピソードのなかでも、トラウマ級の怖さを誇るのが、コミックス20巻の「ゴルゴンの首」だ。
学校でしょっちゅう立たされるため、足が疲れない道具はないかとドラえもんに聞くのび太。そこでドラえもんは、目から光線が出て筋肉をこわばらせて石のようにしてしまう「ゴルゴンの首」というひみつ道具を貸す。
翌日、のび太は「ゴルゴンの首」を学校でうまく使いこなすも、タケコプターで家に帰る際にうっかり裏山に落としてしまった。
慌てて裏山へ捜索に向かうドラえもんとのび太だったが、そこにはすでに石にされた先生の姿が……。その後も、空を飛んでいる鳥、さらにはドラえもんまでも石になるという恐ろしい展開が続く。
のび太はジャイアンとスネ夫に助けを求め、2人を連れて再び裏山へ入るのだが、それでもまた一人、また一人と石にされていく。最終的には木の上で石になったジャイアンが偶然「ゴルゴンの首」の上に落ち、事態は収束するのだった。
ギリシャ神話に登場する怪物・ゴルゴンをヒントにして作られたであろう、この「ゴルゴンの首」。人を石にする際に「ウオーン」と吠え、見た目も古代の石像から蛇のようなものが生えていて不気味だ。しかも意志を持っているかのように自ら這いずり回り、近づいて来た人を瞬時に石にしてしまうのだから恐ろしい。
そんな恐怖の道具が、裏山の生い茂る木々に潜んでしまったこのエピソード。もしものび太までもが石にされてしまっていたら? あわや『ドラえもん』が終わってしまっていたかもしれない、ホラーなエピソードだった。
■裏山がのび太をダメにする!?「森は生きている」
裏山はのび太にとってくつろげる場所であり、嫌なことがあるときの逃げ場でもあった。しかし裏山を愛しすぎたゆえ、のび太が人間社会から離脱しそうになるちょっと怖いエピソードもある。それが、コミックス26巻の「森は生きている」だ。
のび太は嫌なことがあると裏山で過ごし、ポイ捨てされたゴミを片づけていた。それに感心したドラえもんは「心の土」というひみつ道具を出し、裏山とのび太が心を通わせられるようにしてあげる。
これにより、のび太が裏山に来ると、山はのび太のために木の葉でベッドを作ったり、おやつを落としたりして歓迎するように。その結果、裏山はのび太にとってさらに快適な場所になった。
しかしそれ以降、のび太はますます裏山にこもるようになる。ドラえもんや親の忠告も聞かず、ついには学校にも行かずに裏山でずっと暮らすことを決意してしまうのだ。
だが裏山は「のび太をこれ以上近づけないでほしい」というドラえもんの頼みを聞き入れ、最終的にのび太を無理やり山から追い出している。これは本当にのび太のことが大切だからこその、裏山の決断だったのだろう。
実生活の嫌なことから目を背け、目の前にあるただ快適で楽しい生活を選んでしまうのび太の気持ちは分からなくもない……が、子どもに与えるべきものは快適な環境だけではいけないのかもと痛感させられる。
「こんなことつづけてたらきみはだめになっちゃう!!」という、ドラえもんの言葉が刺さるエピソードであった。