■楽器を始めたのは音楽教師の影響!?
──話を戻しますが、米軍基地の近くで育ったことが、幼い頃の伊藤さんに大なり小なり影響を与えたということでしょうか?
伊藤 そうですね。『チャーリーズ・エンジェル』や『白バイ野郎ジョン&パンチ』とか、アメリカのテレビドラマにも夢中になっていました。もちろん、音楽は洋楽をたくさん聴いていましたね。今だとメジャーアーティストのアルバムは世界同時発売ですが、昔は日本での発売まで数か月待ちました。でも横須賀では普通に売っていて、しかも日本の輸入レコード屋さんで買うよりも安くLPレコードを買える環境でしたから。中学生くらいのときは一番マセたい時期じゃないですか。その頃、アメリカ文化に強い刺激を受けましたね。
──初めてギターを手にされたのは?
伊藤 15歳くらいですね。これも妙な話なんですが、中学時代の音楽の先生が元プロのミュージシャンで、ドラムをやっていた人だったんです。それで公立の中学校なのにドラムの8ビートのリズムを教えてくれて、それができたら5段階評価の3以上をくれたんですよ。今考えると「公立の学校なのに、それでいいのか?」と思うんですけどね(笑)。でもその時は、学校でドラムブームみたいになったんです。音楽の授業の時に、みんながビートを叩くと、先生がピアノでセッションしてきて。そのときにバンドジャムというか、合奏の楽しさを知り、友だちと「バンドやろう」という話になりました。そんな事情だったので、みんなドラムをやりたがったんですよ。
──普通はみんなギターをやりたがって、ドラムがなかなか揃わないのが「中学生バンドあるある」のような。
伊藤 珍しいパターンですよね。でも家が金持ちのヤツが「オレ、ドラム買ったからさ」っていうし、「じゃあオレはどうしようかな……ギターだったらできそうだな」という流れでした。
──バンドは割とインドアな作業ですが、10代の伊藤さんはスポーツで汗を流すことはありましたか?
伊藤 当時は部活が半強制だったので、私もバスケットボールをやっていたんです。でも、やっぱり途中で離脱してしまって。そこから音楽に集中するようになりました。
──YouTubeチャンネルを拝見すると、仮面ライダーグッズへの熱い思いを感じます。そうした世界にハマっていったのはいつ頃からですか?
伊藤 子どもの頃は、なんでもよかったんですよね。1週間に1回、シールつきのお菓子を買って集めるとか。フィギュアを買うようになったのは、ELTでデビューする前の20歳ぐらいのころですね。私は12インチ(約30cm)のフィギュアが好きなんですが、それも当時はあくまで子ども向けだったので、クオリティ的にはあまり満足できるレベルのものが少なかったんですよ。そのなかで人間の顔ではなく、たとえばダース・ベイダーのようなマスクをかぶったキャラクターなら、それほどガッカリしないんです。造形がそれなりにしっかりしていて、光って音が出たりするものを「つい買っちゃった」のが始まりですかね。
伊藤一朗(いとう・いちろう)
1967年11月10日生まれ。1996年8月、「Every Little Thing」のギタリストとしてデビュー。現在はボーカルの持田香織との2人ユニットとして活動する一方、個人としても精力的に活動。「ELT」は2026年に活動30周年を迎える。