■逆再生が斬新だった『桃華月憚』
『桃華月憚』は成人向けのゲームのアニメ化作品であり、ヒロインの川壁桃花役に当時新人声優だった早見沙織さんが起用されている。
このアニメが伝説となっているのは、「最終回から始まり第1話にさかのぼっていく」という、「逆再生」とでも呼ぶべき演出が行われたからである。
つまり、第1話で結末が分かり、最終回で物語の冒頭を見るという流れ。起こった出来事の伏線を逆にたどっていくような形になるが、内容は成人向けのゲームが原作なのもあって、かなりハードなものとなっていた。
ただでさえ物語の内容の把握が難しいストーリーなのだが、それを逆再生にすることでさらに難解になっている。正直初見時はまったくストーリーがつかめなかったが、それもそうだ、最終話から見ているのだから。この挑戦的すぎるアニメは、アニメファンであれば知っておいて損はないだろう。
本作はいったん観終わってからも、最終回から時系列順に見たり、早見さんの新人時代の演技を楽しんだりと、さまざまな楽しみ方ができる作品だ。オープニングテーマとエンディングテーマは出演声優が歌っており、喜多村英梨さん、伊瀬茉莉也さん、そして早見さんの歌声が楽しめる点も見逃せない。
放送当時は賛否も巻き起こったが、逆再生、攻めた内容、声優たちの瑞々しい演技など、多くの話題を生み出した『桃華月憚』は、いまでも語り継がれる実験的な作品となっている。
アニメの世界では実験的な取り組みが賛否を巻き起こすこともある。今回紹介したのも、当初は戸惑いの声が聞かれたものの、いまや伝説として語り継がれている作品たちだ。
制作陣の遊び心やファンを楽しませるためのさまざまな仕掛けを見ると、アニメというジャンルにはまだまだ新たな可能性が眠っているという大きなメッセージを感じてしまう。