
いまや日本を代表するコンテンツとなっているアニメ文化。年間でも数えきれないほどの新作アニメが制作され、中には挑戦的な演出で大反響を呼んだアニメも存在する。
あまりにも斬新すぎる演出は、時に視聴者を戸惑わせてしまったこともあるほど……。今回は、中でも特にアニメファンを困惑させた、“信じられないアニメ演出”を紹介していこう。
※本記事には各作品の内容を含みます
■いまや伝説!!『涼宮ハルヒの憂鬱』エンドレスエイト
ラノベブームの火付け役として知られ、いまだにカリスマ的な人気を誇る谷川流さん原作の『涼宮ハルヒの憂鬱』。アニメは大ヒットを記録し、その内容はもちろん、主題歌や声優、コスプレなど、サブカルチャーに与えた影響も大きい。
本作の中でアニメ界を騒然とさせたのが、8話連続シリーズである「エンドレスエイト」。このエピソードは同じ話を違う演出で8話繰り返すという超実験的なエピソードだ。いわゆる「ループもの」といってしまえば単純だが、キャラクターの行動やストーリー、結末と、いずれもほとんど同じ内容を2か月繰り返すという前代未聞の挑戦なのである。
このアニメはヒロインである涼宮ハルヒの特異性によって、「世界」に大きな影響が出てしまうというのがテーマとなっている。そして「エンドレスエイト」では、「ハルヒが満足するまで夏休みが終わらない」という状況に。原作では短編となっているが、アニメ化の際には8話連続同じストーリーという驚きの手法でアニメ界の話題をさらった。
同じと言っても、演出や映像をはじめとして細かい内容は異なる。ハルヒのやりたいことリストの内容やキャラの服装など、ちょっとした部分も変えられていて、それを発見するのも楽しみのひとつだ。もちろん終盤に行くにしたがって、非常にスローペースではあるが解決に進んでいく。
さらに面白いのが、声優たちの演技である。これは実際に8回分のアフレコをしたと明かされていて、同じセリフで演技が変わっている部分も多く存在する。
特に深夜に話し合うシーンでは、キョン役の杉田智和さんを筆頭に明らかに演技を変えているのが分かる。似たようなやりとりでも後半のエピソードになると、声優たちのアドリブ合戦となっているのも面白い。若干の違いしかない8話だが、それだけに前の放送と違っている部分を発見すると嬉しいものだ。
「つまりこういうことです。我々は同じ時間を延々とループしているのですよ」。エンドレスエイトをぶっ通しで鑑賞すると、古泉一樹のこのセリフが耳に焼き付いてしまう。
■アニメ界の話題を独占!!『ポプテピピック』
『ポプテピピック』は2018年に放送されたアニメ、および2021年に再放送がリミックス版として放送されたアニメだ。また2022年には第2期も放送されている。本作の最大の特徴は、前半と後半で主演声優を変えたものを放送することである。
前半パートと後半パートで流れる内容はほとんど一緒だ。だからこそ、声優たちのアドリブや抑揚、演技プランなどによって比較しながら楽しめる作品となった。本放送と再放送(リミックス版)でも声優が変わっていて、同じパートは一度たりともないといえる。
前半パートと後半パートで変更されるのはポプ子とピピ美。放送前にはふたりの役には、小松未可子さんと上坂すみれさんの配役がアナウンスされていた。
しかし、いざ放送が始まると、全ての話のA・Bパートで声優が変わるという驚きの展開。さらにそのキャスティングは、江原正士さん、大塚芳忠さん、小山茉美さん、三石琴乃さんといった超大物声優から、悠木碧さん、竹達彩奈さんといった若手の人気声優まで幅広い。
組み合わせも実に面白く、例えば本放送第1期第1話の後半パートの三ツ矢雄二さんと日髙のり子さんの組み合わせといえば、伝説的なアニメ『タッチ』のタッちゃんと南ちゃんだ。第2話の前半パートの悠木さんと竹達さんは「petit milady」として声優ユニットを組んだ経験があり、第3話の後半パートの中尾隆聖さんと若本規夫さんは『ドラゴンボール』のフリーザとセルのコンビである。
第1話の2人の出会いのシーンで出てくる、「あんた、名は?」、「俺は俺だぁ!」というセリフ。ここだけを見ても、「同じセリフなのになぜこんなに違うんだろう」と、声優のスゴさを改めて体感できるだろう。スタッフの遊び心が全開の作品であり、アニメファンだけでなく、声優ファンでも楽しめる仕掛けが毎週話題となっていた。