■出遅れに対する、取り返しのつかない後悔
アニメ放送を知りながら、どうして最初から観なかったのだろう。「後悔先に立たず」とは、昔の人はうまいことをいったもんです。
実は、当時の私が『ガンダム』を頑なに観ようとしなかった背景には、ひとりの登場人物の存在がありました。それが「ガルマ様」です。
島村ジョーをはじめ、イケメンキャラがなにより好きな私。そのうえ敵側の「悪役美形」にときめいていたお年頃。『ボルテスV』のハイネル様や『闘将ダイモス』のリヒテル様、こうした悪役美形がめちゃくちゃ大好きなんだから、ジオンの貴公子「ガルマ様」にときめかないはずがありません。
……が、何もかもが遅かったのです。
私がガルマ様の存在に気づいたのは夏の初め。そう、ガルマ様がシャアに謀られ、裏切られたうえに超絶煽られ、退路を断たれて特攻をかまし、イセリナを思い出しながら壮絶に散った後のことでした。アニメ雑誌で華々しい最期を知ってしまい、これからの活躍や登場が望めないため「ガルマ様がいないのなら(ガンダムは観なくて)いいか」と、当時の私は少々投げやりになっていたのかもしれません。
ですが34話の初視聴をきっかけに、私は今まで『ガンダム』を視聴しなかったことを後悔し、何より動いてしゃべるガルマ様が観たすぎて、オタクの卵は孵化する寸前にまで至ってしまうのです。
当時、女子ながらロボットアニメが大好きだったのは、ある意味ハンデともいえました。なにせ、お友だちや母親からは「えー、変なの」「それは男の子が観るものよ」などなど、まるで悪いことのように言われ続けたのです(今でも笑い話にされて困りものです)。
ところが、まだ「オタク」という言葉もなかった1970年代後半。『ガンダム』が登場したことをきっかけに、私以外にも……女子のロボットアニメファンが大勢いることを、のちに“肌感覚”で知ることになるのでした。
それは、昭和を生きた私にとって、トンデモない出来事だったのです。