「別れが悲しすぎる…」クジラ怪人にモグラ獣人も…昭和『仮面ライダー』で描かれた「心優しき怪人」の最期の画像
『仮面ライダーBLACK』 Blu-rayBOXより C) 石森プロ・東映

 1971年から放送された『仮面ライダー』シリーズは、昭和・平成・令和と50年を超える人気特撮ヒーロー番組である。正義のヒーローが悪い怪人をやっつけるというのが基本的なパターンであり、筆者も手に汗握ってライダーたちを応援したものだ。

 怪人たちは人間を恐怖させる存在として登場するが、これまでのシリーズでは悪に染まっていない怪人も登場し、人間たちと心通わせるエピソードも描かれた。そして、時に悲しい別れを迎え、子どもたちを涙させたのだった。

 そこで、筆者が幼少期に心を打たれた、昭和の『仮面ライダー』シリーズに登場する心優しき怪人たちを振り返ってみたい。

※本記事は各作品の内容を含みます

■アマゾンとの友情を経て人間の味方になって東京を救った「モグラ獣人」

 1974年から放送された『仮面ライダーアマゾン』では、「地底からきた変なヤツ!!」というちょっと可哀そうなタイトルがつけられた第5話に、「モグラ獣人」なるキャラクターが初登場する。名前の通りモグラっぽいデザインの怪人なのだが、口が黄色いタンポポのような花の形をしており、「チュチューン」という鳴き声はとても気持ち悪い。

 モグラ獣人は、アマゾンと仲の良い小学生・岡村まさひこを誘拐し、戦いを有利にしようとする。だが、所属する秘密結社ゲドンがひそかに狙っている「ギギの腕輪」を、アマゾンに「よこせ」と率直に言ってしまうなど、子どもから見てもかしこさには欠ける印象だった。

 しかも、アマゾンを攻撃するが、いまいち決定打に乏しい。そのうえ卑怯。まさひこに迫ることで怒りが頂点に達したアマゾンが仮面ライダーアマゾンに変身すると、一気に劣勢となったモグラ獣人は地中に逃げ帰る始末。弱いくせにアマゾンを必要以上に怒らすなんて……。

 とはいえ、このモグラ獣人は逃げ帰ったことなどを理由に、ゲドンのボスである「十面鬼ゴルゴス」の怒りを買い、日干しにされる刑となる。処刑場までバイクで引きずり回されるモグラ獣人にちょっと同情してしまうシーンだ。

 いつもは地中にいて太陽が苦手なモグラ獣人だが、今まさに干からびようとしているところをアマゾンに助けられる。そこから2人は友だちになり、彼はまさひこたち人間の味方になっていく。そして、人食いカビを栽培して東京を壊滅しようと企むキノコ獣人を騙してカビを入手するなど、人間のための行動まで見せる。

 だが、解毒剤を作るべくアマゾンたちの元へ戻ろうとしたところ、真相を見抜いたキノコ獣人によって人食いカビを喰らってしまう。最後はアマゾンやまさひこたちに見守られて絶命するのだが、彼が浴びた人食いカビによって解毒剤が完成。最初はいいイメージがなかったが、味方キャラに転じ、最期のシーンでは泣けてしまうほどの存在感を見せたモグラ獣人。自らの命をかけて東京を救うこととなった心優しき怪人の代表的キャラだ。

■美女が醜い怪人に……改造人間をこれ以上作らせないために組織へ反抗した「サソランジン」

 1979年から放送された『仮面ライダー(新)』(以下:スカイライダー)では、第4話に「サソランジン」なるキャラクターが登場する。

 サソランジンはもともとは、可也という小学生の妹がいる上村美也という女子大生。北海道の台場山での登山中に秘密結社・ネオショッカーによって拉致され、ネックレス型のリモートコントローラーで思うように操れる遠隔操作タイプの改造人間・サソランジンにされたのだった。美貌の美也が手術台でネオショッカーの幹部・ゼネラルモンスターに改造されるという、ショックなシーンで生まれた怪人だ。

 さて、スカイライダーはサソランジンを倒し、リモコンを破壊。これによって彼女は一時的に上村美也に戻ることができた。だが、妹の記憶も取り戻したのも束の間……大好きな妹の前でサソランジンへの変身が始まり、美也は絶望してしまう。

 そして、妹に二度と会えないことを悟り、これ以上改造人間を作らせないようにゼネラルモンスターを倒すことを決意する。しかしその思いも虚しく、戦闘員たちのクロスボウで胸に矢を放たれて倒れてしまうのだった。

 最期はスカイライダーに「妹を頼みます」と託して消滅した。サソランジンは自らの運命を受け入れ、他人のために戦った悲劇の怪人だった。

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