エース殺害に白ひげにも…『ONE PIECE』読者に嫌われがちな「赤犬」サカズキは過去、何をしたのかの画像
「Portrait.Of.Pirates ワンピースNEO-DX 海軍本部大将 赤犬【サカズキ】」(メガハウス) (C)尾田栄一郎/集英社・フジテレビ・東映アニメーション

 連載開始から25年以上が経ち、今や異なる世代の共通言語としても機能しつつある『ONE PIECE(ワンピース)』。幅広い世代から愛されており、作品の捉え方も世代ごとにさまざまだが、多くの読者が共通して嫌悪感を抱きがちなキャラクターも数名見受けられる。

 たとえば、現在は海軍元帥としてルフィたち海賊と敵対する、“赤犬”ことサカズキである。物語が終盤に差しかかった同作において、今後ルフィたちとも必ずぶつかることになる存在だ。

 これまでサカズキは何をして、読者にどのような印象を与えてきたのか。それをあらためて振り返りつつ、本当に忌むべき存在なのか今一度整理してみたい。

※本記事は作品の内容を含みます。

■サカズキの“正義”の犠牲になった人々 

 今や海軍本部の元帥として海賊たちの動向に目を光らせている赤犬は、麦わらの一味の考古学者、ニコ・ロビンの過去編にて初めてその姿を明らかにした。

 ロビンの故郷である考古学の島「オハラ」では、『ONE PIECE』の世界における禁忌でもある「ポーネグリフ(歴史の本文)」の解読が行われていた。そして“空白の100年”の真実に近づいたことで海軍は「バスタ―コール」を発動、島に対して軍艦による一斉砲撃を敢行する。

 考古学に関わりのない島民は海軍が用意した避難船で島から脱出。海軍中将だった巨人族のハグワール・D・サウロは取り残されたロビンを守るべく、のちの大将“青キジ”ことクザンと戦い、海軍の正義について問う。その直後、島民が乗る避難船まで海軍の砲撃によって吹き飛ばされてしまうのだ。

 「やるんなら徹底的にだ…!!」と避難船を撃沈した軍艦に乗っていたその男こそ、サカズキだ。

 罪のない島民だけでなく、同じ海軍に属する海兵たちまで巻き添えにしたことに、同僚のクザンでさえ絶句。サカズキは「“悪”は可能性から根絶やしにせねばならん!!!」と、避難船を沈めた理由を語っている。

 このとき中将だったサカズキは、目深に被った帽子とフードによって表情は見えなかったが、とにかく「非情な男」という強烈な印象を読者に与えた。

 なお、のちに単行本のおまけコーナー「SBS」では、サカズキが「徹底的な正義」を信念に掲げていることを明らかにしている。

■己の正義を守るための殺戮 

 海軍本部のあるマリンフォードでのポートガス・D・エースを巡る戦いを描いた「頂上戦争編」において、サカズキはのちの物語に大きな影響を与える戦いぶりを見せることになる。

 激しい戦いの末、処刑台に捕らわれていたエースの解放に成功するルフィ。白ひげを除く海賊たちがマリンフォードから撤退を試みるなか、サカズキは「白ひげは所詮…先の時代の“敗北者”じゃけェ…!!!」と嘲った。

 エースが父のように慕う白ひげを侮辱したサカズキの言葉は、その場から逃げられるはずだったエースの足を止めさせ、両者は激突。「マグマグの実」のマグマ人間であるサカズキの力はすさまじく、マグマの拳からルフィを庇うかたちで体を貫かれて、エースは命を落とした。

 その直後にサカズキは、言葉なき怒りをまとった白ひげとも対決。直接仕留めたわけではないが、顔半分を消滅させる致命傷を与え、白ひげの落命にも大きく影響を与えた。

 サカズキの猛攻はそれにとどまらず、ジンベエの胴体を貫通した攻撃がルフィにまで到達し、ルフィの体にも消えない傷を刻みこんでいる。

 「エースの死」により、海軍にとっての当初の目的は果たしていた。しかし、なおも戦闘は終わらず、これ以上の戦いに意味を見出せない者たちまで出るなか、サカズキは鬼神の如き形相で「海賊という“悪”を許すな!!!」と檄を飛ばし、徹底的に海賊の殲滅を行うのである。

 双方の被害は甚大で海兵のコビーが戦闘を止めようと割って入るが、サカズキは「数秒…無駄にした……正しくもない兵は海軍にゃいらん…!!!」と自身の部下にすら殺意を向けた。

 海軍と敵対するエースや白ひげだけでなく、仲間であるはずの多くの海兵の命まで犠牲にしたサカズキに対し、読者がネガティブな印象を受けるのも当然のことだろう。

 ここで少し気になったのが、マリンフォードでのサカズキの言動を市民はどのように受けとめるのか、という点である。『ONE PIECE』の世界では、多くの市民にとって海賊の存在が脅威であることは間違いない。なかには汚職に手を染める海兵もいるとはいえ、基本的には海賊より海軍のほうを信頼するのではないだろうか。

 その海賊の殲滅を掲げるサカズキの行為こそが正義と見る市民がいても不思議ではない。

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