■千年続く日本人形の呪いにゾクッっとする『妖鬼妃伝』
最後は、『ガラスの仮面』の作者であり、短編ホラーのスペシャリストでもある美内すずえ氏の作品を振り返る。ホラーは主に1970〜80年代にかけて発表されていたが、いずれも丁寧に練り込まれた恐怖作品ばかり。今回は、その中から『妖鬼妃伝』を見ていく。
地下鉄に乗り、目的とは違う角宮駅で降りてしまった主人公・秋本つばさと友人のターコは、駅と直結する帝国堂デパートで開催されていた日本人形展を訪れた。その直後、ターコがデパート内で行方不明になり、5日後に彼女が地下鉄にはねられて死ぬという奇妙な事件が起こった。
友人のクミとともに、不可解な死の真相を追い始めたつばさは、盲目の霊能力者・九曜久秀と知り合い、角宮駅と帝国堂デパート周辺で霊障が頻発していることを知る。
後日、デパートの社員たちが「妖鬼妃様の千年祭が近い」と話しているのを聞き、ターコがこのデパートで事件に巻き込まれたと確信したつばさは、閉店後に散策する計画を立てる。ちなみに閉店時間は18時半。時代を感じる一コマだ。
深夜のデパートで見たのは雛人形のような着物を着た人々。地下鉄に乗った彼らを尾行すると、あるはずのない宮之内駅に到着し、大量の人形が置かれた平安時代のような屋敷が現れる。なんと地下鉄は妖鬼妃の力が蔓延る魔界の入口だったのだ。
妖鬼妃の正体は魔人・阿黒王の妻。彼女は魂を人形に宿しながら1000年の時を生きており、九曜はそんな妖鬼妃一門と戦う九曜家の最後の一人なのである。そして、人形にされた亡きターコのために戦う決意をしたつばさは、九曜とともに妖鬼妃一門に立ち向かうのだった。
異世界に通じる地下鉄、平安時代から続く因縁、人形の恐怖、イケメン霊能者との恋など、あらゆるドキドキ要素が詰まった同作。短編ではなく長編でも読んでみたい一作だ。
今回紹介した3作品は、恐怖描写の怖さはもちろんのこと、それ以上にストーリーがしっかりしていて読み応えがある。時には泣けて時には怖さに震えて、時には胸キュンもできる。そんなところが少女漫画ホラーの良さだろう。