
愛くるしさや美貌、そして卓越した演技力によってドラマや映画で活躍する人気女優たち。しかし、彼女たちが演じるのはなにも人間の役ばかりではない。
とくに漫画を原作とした実写化作品では、愛らしいヒロインやクールな女性キャラクターではなく、時にグロテスクで、時に妖艶で、見るものを震え上がらせるような“化け物”として登場することもある。漫画やアニメを原作とする作品では「再現度」が求められることもあり、それまでのイメージを大きく覆すような役柄となるケースも少なくない。そしてギャップがあればあるほど、見る人に大きなインパクトを与えるのだ。
人気女優たちはどのようにして人間とは異なる存在を演じきり、観客を魅了したのだろうか。今回は、実写化作品で個性豊かな“化け物”を熱演した女優たちを見ていきたい。
※本記事には各作品の内容を含みます
■グロテスクと美しさの見事な融合…『寄生獣』深津絵里
漫画作品では数々の人ならざる存在が描かれてきたが、岩明均さんの漫画『寄生獣』に登場する、人々の肉体を乗っ取り他の人間を捕食する「パラサイト(寄生生物)」は、頭部が刃物状に変形する恐ろしい化け物だ。
2014年から山崎貴監督によって前後編で映画化されており、染谷将太さん演じる主人公・泉新一が自身の右手に寄生したパラサイト・ミギーと共生しながらも、壮絶な戦いに巻き込まれていく姿が描かれた。
同作には寄生生物に体を乗っ取られたキャラクターが多数登場する。そんな中、映画でのもう一人の主人公とも言えるのが、新一が通う学校の教師である田宮良子。彼女は怪物でありながら、他の個体に比べてかなり高い知能を持っているのが特徴。自分たちの存在意義に悩み続けるキャラでもあり、そんな複雑なパラサイトを女優の深津絵里さんが魅力的に演じていた。
田宮は冷淡で表情をいっさい変えないキャラだが、深津さんはにこやかで優しい役を演じるイメージが強い。だからこそ、田宮の不気味さが際立つのだ。
そして忘れてはいけないのが、田宮が「パラサイト」としての本性をあらわにするシーンの数々だ。頭部を歪に変形させ攻撃する原作のコマが、CGによって実に生々しく再現されている。
一方の目だけが動いたり、顔が縦に割れたり、顔面の一部から触手が生えたり……深津さんの美しい顔が変形する様は、まさに異様の一言。深津さんの持つ美しさと「パラサイト」のグロテスクな造形美が見事に融合した、実に魅力的な“化け物”キャラと言えるだろう。
■妖しい魅力と美貌を持つ、悪の女王…『怪物くん』稲森いずみ
怪物という恐ろしい存在を独特のタッチでコミカルに描いた作品と言えば、藤子不二雄Aさんの漫画『怪物くん』だろう。2010年には日本テレビ系で実写ドラマが放送され、アイドルグループ『嵐』の大野智さんが主演を務めたことで大きな注目を集めた。
本作には、ドラキュラ(八嶋智人さん)、オオカミ男(上島竜兵さん)、フランケン(チェ・ホンマンさん)の3人のお供の他にも、松岡昌宏さん演じるプリンス・デモキンや鹿賀丈史さん演じる怪物大王といったキャラクターが登場する。そして、セクシーな“化け物”役として登場したのが、女優の稲森いずみさんが演じるドラマオリジナルキャラクターのデモリーナだ。
人間への復讐のため暗躍するデモリーナなのだが、その姿はかなり刺激的。ボンテージ風のタイトなスーツに禍々しい造形の髪飾りをつけ、黒一色の姿がどこか妖しい色気を振りまいている。
相手を見つめる鋭い眼差しは、まさに悪の女王。だが一方で、過去は人間であったという設定もあり、ときおり優しい心を見せる。複雑かつ魅力的なギャップを持ったキャラでもあった。
この絶妙な感情の変化や葛藤を、稲森さんは持ち前の演技力によりさりげなく、巧みに表現。悪役でありながらわずかに見える人間臭さも、デモリーナの魅力の一つと言えるだろう。
禍々しく妖艶な見た目もさることながら、物悲しい過去にプリンス・デモキンとの純愛劇など、敵役でありながら実に見所の多いキャラクターだった。