■一年戦争を勝利に導いた立役者『ティアンム提督』

 最後に紹介するのは、連邦軍の勝利に大きく貢献した名将・ティアンム提督だ。

 ティアンムは、ルウム戦役などで大きな被害を受けた連邦軍の宇宙艦隊の再建を図るべく、艦隊再編計画「ビンソン計画」を立案し、戦力の立て直しに尽力した人物。

 実はアニメの第31話『ザンジバル追撃!』で、ジャブローからホワイトベースが先発し、それを囮にするかたちで宇宙へと上がったのがティアンム率いる主力艦隊だった。

 物語は主人公視点で描かれるため、どうしてもホワイトベースを囮にしたゴップをはじめとする連邦上層部の作戦はズルく思えたが、あらためて考えるとこの作戦の合理性と有効性がよく分かる。

 シャアのザンジバルがホワイトベースを追ったためにジオンの戦力が分散され、ティアンム艦隊はほぼ無傷のまま宇宙へと進出。結果として、ソロモン攻略戦の準備を万全に整えることができたのである。

 そして一年戦争の末期、ティアンムはソロモン要塞の攻略を目的とする「チェンバロ作戦」の中心人物として活躍する。ソロモン攻略戦でティアンムは、連邦の切り札である「ソーラ・システム」を巧みに配置。難攻不落だったソロモン要塞に対し、壊滅的な打撃を与えることに成功する。

 しかし、その戦いのなかでドズル・ザビが乗るビグ・ザムの特攻を受けて、座乗艦タイタンは轟沈。ティアンムも戦死することとなった。

 多くの敵を道連れにしようとしたドズルが、ティアンムの乗る旗艦タイタンを狙ったのは必然だったのかもしれない。それだけソロモン攻略戦におけるティアンムの功績は大きく、ドズルにとっても倒すべき標的だったといえる。

 その後もジオン軍は徹底抗戦の構えを見せ、戦いは最終決戦の地ア・バオア・クーへともつれ込むことになる。しかし、実質的にはソロモン陥落の時点で一年戦争の大勢は決していた。

 そのことを踏まえると宇宙艦隊の立て直しを図り、重要拠点であるソロモンを陥落させて一年戦争の趨勢を決めたティアンムこそが、連邦勝利の立役者といえるのではないだろうか。

 

 一年戦争において、連邦軍は官僚主義的な無能な軍人も見受けられたが、実際は戦局を大きく動かした優秀な軍人も存在した。とくにホワイトベース隊とかかわりが深かったパオロ艦長やワッケイン司令の柔軟な判断がなければ、アムロたちもどうなっていたか分からない。

 レビル将軍の存在感に比べてティアンム提督はそこまで目立たなかったかもしれないが、ソロモン攻略戦の勝利がなければ戦争の行方も変わっていたに違いない。劇中、決して派手ではなかったが、彼らの貢献が連邦を勝利に導いたと言っても過言ではない。

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