
『デスノート』(原作・大場つぐみ氏)や『ヒカルの碁』(原作・ほったゆみ氏)、『バクマン。』(原作・大場つぐみ氏)と、『週刊少年ジャンプ』(集英社)で連載された名作たちを世に送り出してきた小畑健氏。圧倒的な作画力で人気を博している小畑氏だが、それらの人気作よりも前に執筆していた作品も非常に印象深く面白いものばかりだ。
当時から綺麗な作画が魅力的なうえ、設定もユニークで筆者は毎週楽しみにしていたのだが、残念ながら短期間で連載終了してしまった作品もいくつかある。そこで、それらの作品に登場する独特な主人公たちを振り返ってみたい。
※本記事には各作品の内容を含みます
■当時最高齢の主人公じゃない? 融通の効かないロボじいちゃんだった『CYBORGじいちゃんG』壊造時次郎
1989年に連載スタートしたのが、ギャグ漫画『CYBORGじいちゃんG』だ。本作の主人公は御年70歳の壊造時次郎。時次郎は農業を営むかたわら天才科学者でもあり、世界でトップの農業を営むべく自らをサイボーグ化してしまったとんでもないおじいちゃんだ。
たとえば、時速30キロのバスにひかれそうになったタバコ屋のおばあちゃんを守ろうと、マッハ2の速度で体当たり。そのせいで瀕死になったおばあちゃんに対し、素早い動きができるように改造手術を施す。
また、畑を守るため、カラスをガトリングガンやミサイルで派手に撃退。肝心の畑がむちゃくちゃになっていたが、腕組みをし満足気な様子だった。
このように数々の発明をしていく時次郎だが、筆者が普通に凄いと思ったのが、夢を録画できる「夢ビデオ」である。テレビとビデオデッキを元に開発され、“ビデベエ”と名付けられた喋るこのロボットは、アームにある輪っかを寝ている間に頭に装着すると夢を録画することができ、しかもリアルタイムで視聴可能。加えて、ほかの人の夢も見ることができる優れものだ。
ソファで寝ている息子の英一に装着してみると、バニーガールにチヤホヤされて浮かれている夢が流れる。その後、妻の優にボコボコにされる英一。夢だけにちょっとかわいそうだった。
そしてこの「夢ビデオ」、もう一つの輪っかを装着することで他人の夢に侵入することもできる。時次郎は夢のなかでももちろん大暴れしていたが……。でも、いい夢の続きを見たい気持ちは誰にでもあるので、こんな装置があったら欲しいものだ。
最終的に家族を全員改造するという暴挙に出るなどなかなか融通の効かない“ロボじいちゃん”だが、技術力は国防を任せても問題ないくらい凄い。やり過ぎ具合がぶっ飛んでいて、非常に面白かった。
■友達同士でちょっと流行った「ドゴーンパンチ」『魔神冒険譚 ランプ・ランプ』ランプ
1991年から連載されたのが、『魔神冒険譚ランプ・ランプ』(原作:泉藤進氏)だ。
主人公・魔神ランプは邪悪の化身である魔人・ドグラマグラによってランプに封印されていた。かつては人間と仲の良かった魔神たちだが、ドグラマグラの影響によって悪い心を植え付けられてしまい、満月になると人を襲うようになってしまう。
そして少年トトとその姉のライラが住む村にも魔神が襲い掛かり、ライラの魂が抜かれてしまう。そこでトトは“正義の魔神”と言い伝えがあるランプの封印を解くべく、村に流れ着いたルーキーと一緒にランプを復活させるのだ。
ところがランプは口が悪く正義の心も持っていない魔神で、100年ものあいだ封印されていたため腹ペコでトトを食べようとする始末であった。
だが、美しいライラに一目ぼれをし、姉を守るために根性を見せるトトを気に入ったランプは、村を襲った魔神を必殺技「ドゴーンパンチ」で撃破。脳天から足の指先まで骨を粉砕する威力を持つこの技は、当時、筆者の小学校で少し流行った記憶がある。
さて、ストーリーはドグラマグラの部下によってライラがさらわれ、さらに“宝玉”を抜かれると数時間で死んでしまう呪いの首飾りを付けられてしまう。解除するには首飾りから抜き取られた4つの宝玉が必要なのだが、これをドグラマグラと部下たちが持っているので、ランプが取り戻しに行くという展開となる。
その後、ランプは激闘の末、ドグラマグラになんとか勝利。途中で仲間も傷つき倒れていくのだが、宇宙の秩序を取り戻した礼として神から願いが叶う「命の宝剣」をもらい、ルーキーたちを生き返らせるのだ。
なんだかんだ言って仲間思いのランプは頼もしいが、絶対悪として君臨するドグラマグラも怖いくらいカッコ良すぎた。ちなみに筆者は布でくるまれた千眼魔神が好きだった。当時読んでいて覚えている読者がいたら嬉しいものだ。