■ふたりに共通するルーツ

――福田監督にとって、重田さんとご一緒する面白さとは?
福田 重田さんが描く絵が一番スタイリッシュなんです。メカをマッシブ(筋肉質)に描く人はけっこういるんですが、重田さんほどスタイリッシュじゃないんです。しかもただ細いメカというわけでもなくて、重田さんのメカは全身が引き締まっていてスピード感がある。あと、あんまり余計なことをしない(笑)。
重田 余計なことって(笑)。
福田 「そこまで望んでいないよ」ってところを描く人がいるんです。主張が強すぎるアニメーターは一見やる気があるように見えるけれど、作品のバランスが壊れてしまう。そのあたり、重田さんはバランスをちゃんと取ってくれるので。
重田 自己主張の強いアニメーターさんは注目を集めやすいですからね。でも個人的にはその強い自己主張が欲しいとも思っているんですね。
福田 たしかに主張が強い作画って面白いとは思います。でも作画だけが面白いと言われるのは、作品としては違うんじゃないかなと。そのあたりのバランスを重田さんはよくわかっていて、外さないんですよ。
重田 敢えてスタイリッシュに描こうと明確に思っているわけではなくて、自分が絵的に気持ちの良いものを描いているつもりではありますね。もっと違う描き方で肉(マッシブに)を盛ってみたほうが良いのかなとか思うときもあるんですが、自分としては、そういった意味ではあまり器用なほうではないと思っているので、ずっとひとつの引き出しを開けてしまっているという感じではありますね。よく言えば「個性」だと思うし、自分がこれまで何を見てきて、何をカッコいいと思ってきたか、ということだと思いますね。
――おふたりの共通のルーツとなる作品はあるのでしょうか?
福田 ふたりとも世代的に近いからねえ。
重田 観てきたものはほぼ一緒だと思いますよ。
福田 重田さんは『宇宙戦艦ヤマト』が好きですよね。
重田 『ヤマト』は好きですね。あの作品がきっかけで、アニメーターになろうと思いましたから。ただ、この仕事を始めたら、あらためて『ヤマト』をやる機会はなくなりましたけどね。本当は『ヤマト』を描いて動かしたかったんですけど、いまは『ヤマト』も3DCGが主体になっちゃいましたし。
――ロボットではなく、戦艦を描きたかったんですね。
重田 アニメ業界に入ったら戦艦を描く仕事はほとんどなくて。それで仕事上ロボットを描くようになりました。ロボットを描くのも嫌いじゃないし面白いんですけど、本当は戦艦を描いてみたかったですかね。戦艦とロボットでは描く面白さが全然違うんじゃないかと思いました。
――『SEED FREEDOM』にもミレニアムなどの艦艇が登場しますが、福田監督も大型艦はお好きですか?
福田 そうですね。僕もミレニアムは、「『マイティジャック』で!」という指示をスタッフに出しました。
重田 自分は、すぐわかりましたけど。でも、まわりの若いスタッフは全くわからなかったんじゃないですかね(笑)。