■ズゴックのシーンに対するこだわり

――おふたりの筆が乗ったシーン、制作していて印象に残っているシーンをお聞かせください。
重田 冒頭から結末までシーンごとに順番に作っていったわけではないのですが、制作序盤はけっこう霧の中を手探りで進んでいくような感じがあって、「本当にこれで大丈夫なのかな?」みたいな不安はありました。ライジングフリーダムガンダムが破壊されて、ストライクフリーダムガンダム弐式とインフィニットジャスティスガンダム弐式が登場してからの後半部分は、現場のスタッフ間でもかなり手ごたえを感じて作ることができたんじゃないかと思いますね。
とくに後半は、いわゆる『機動戦士ガンダムSEED』らしいアクションになっているので、現場の担当者たちもノリがよくなって、お芝居をプラスしながらアクションを作ってくれるようになっていきました。ただ、最後のほうになると今度は締め切りが迫ってきたこともあって、十分な時間がなくなってしまって。そこは別の意味で難しかったところでした。
福田 本当は、重田さんに作画もやってほしかったんです。
重田 そこは時間的にも難しかったですね。最初は手探りからのスタートでしたし、CGだけに専念するのか、作画もCGもやるのか、その見極めもわからなかった。これだけの分量のCGに関わったのは初めてだったので、映画という全体的な作業量の読み方も難しいかったですね。
――福田監督の印象に残っているシーンはどちらでしたか?
福田 今回、絵コンテは5人(福田己津央、西森章、渡部周、麻宮騎亜、寺岡巌)で描いているのですが、自分が担当したのは冒頭の戦闘シーンとミレニアムの出航シーンの辺り、あとはラストです。冒頭の夜間戦闘のシーンはこだわって演出をしましたね。『機動戦士ガンダムSEED』シリーズをよくご存じの方は、私がクライマックスの絵コンテを担当したとわかったんじゃないかと思います。宮河(恭夫※)さんからも、「ラストは福田さんの絵コンテだね」と言われましたから。
※『機動戦士ガンダムSEED』ネットワークプロデューサー、『機動戦士ガンダムSEED DESTINY』エグゼクティブプロデューサー、のちにサンライズ、バンダイナムコピクチャーズの社長に就任。
重田 とくに福田監督は、ズゴックのシーンに関してはこだわっていましたよね。アスランが乗るズゴックがキラをかばって、そこからインフィニットジャスティス弐式が現れるところとか。
福田 あのシーンのイメージは『機動戦士ガンダム』でエルメスが爆発するシーンだったんです。ちょっと爆発が大きかったかな(笑)。
重田 それとズゴックの初登場シーンもなかなか出来が良くて、ズゴックの3DCGモデルを作ったスタッフがアニメーションもつけたいと言ってくれて、アニメーションの制作も担当してくれたんですよ。彼はズゴックに思い入れが強くて、「オレのズゴック」とか言っていたそうですし(笑)。あの戦闘シーンを楽しそうに作っていましたね。
――ズゴックからインフィニットジャスティス弐式が出てくるというシーンは、多くの方が驚いたと思います。あのシーンを活かすために、前半でリアリティを追求されたわけですね。
福田 そうそう。演出ってそういうことだと思うんです。前半でリアリティのある描写をしているから、後半の外連味のある展開が活きるのです。


■書籍情報
書名:『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM メカニック&ワールド』
定価:2,200円(本体2,000円)
判型:A4判
発行:双葉社
https://www.futabasha.co.jp/book/97845754655940000000