
重量感あふれるモビルスーツたちが地上でぶつかり合い、宇宙で飛び交う。大迫力のメカアクションを楽しめる、映画『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM(以下、『SEED FREEDOM』)』。
世界平和監視機構コンパスに所属するラクス・クライン、キラ・ヤマト、シン・アスカたちが、再び戦火に包まれる地球の各地で戦乱を巻き起こそうとする者たちと対峙する。登場人物たちはモビルスーツ(MS)と呼ばれる人型兵器を駆り、戦場を駆け抜けていく。
本作ではこのモビルスーツが3DCGで描かれており、緻密で美しいメカアクションシーンを実現した。その3DCGのアクションシーンを際立てているのが、福田己津央監督の構成力と演出力、そしてメカニカルアニメーションディレクターを務めた重田智さんの外連味がある画面作りだ。
今回はおふたりの印象に残っているシーンを軸に、作品のメイキングを振り返っていただいた。
【第2回/全3回】
※『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』の重要な部分に触れる内容があります。
■監督がこだわったリアリティ

――『SEED FREEDOM』を制作するにあたり、福田監督が大事にされていたのはどんな点でしょうか。
福田己津央監督(以下、福田) 劇場版は尺が長い一本の作品ですから、構成を考えていかないといけない。最後は外連味のある戦いをするということはあらかじめわかっているわけだけど、最初から外連味を出しすぎるといけない。最初はリアルをしっかりと積み上げていくという見せ方にしたかったんです。たとえば、冒頭は暗闇の中での戦闘から始まって地上戦、市街地戦、宇宙とロケーションをどんどん変えていき、戦闘の段取りもそれぞれ変えていくという構成が頭の中にあって、シナリオにも指定していきました。それを3DCGのスタッフに徹底周知できるまでは私だけでなく、3DCGスタッフも含めて時間がかかったなという感じがありましたね。
重田智さん(以下、重田) そのあたりはどうしても時間がかかるし、後半は逆に時間に追われている感じがありましたね。
福田 3DCGのやり取りで覚えているのは、「(見栄えをよくするために)ミレニアムからライジングフリーダムガンダムが発進するシーンで(設定よりも)甲板を伸ばしていいよ」と重田さんが言っていたじゃないですか。それを僕は「伸ばしすぎはダメ」と止めた。そもそも見栄えをよくするためにカタパルトをオープンデッキに置いたのだから、あまり伸ばしすぎるとリアリティがなくなってしまうんです。
重田 テレビシリーズの『機動戦士ガンダムSEED』のときは、モビルスーツの滑走感を出そうと思って、映像では短すぎるアークエンジェルの発進カタパルトを設定よりも伸ばして描いていたこともありましたからね。18年間、誰からも指摘されなかったんですけどね(笑)。
福田 「アニメの嘘」だよね。作画するときに設定よりも誇張して描くことで迫力を出すという。それはすごくわかるんだけど、僕としては今回は「リアル」にやりたかったんです。
重田 作品のそういう塩梅は、今回は作業を進めていかないとわからなかったところでしたね。テレビシリーズと今回の劇場版は「違う」とわかっていたんだけど、試行錯誤しながら、理解していったという部分はありました。